環境サービス従事者における医療関連媒介物が原因のヒトノロウイルス感染症の定量的微生物リスク評価★
Quantitative microbial risk assessment of human norovirus infection in environmental service workers due to healthcare-associated fomites K.N. Overbey*, G.B. Hamra, K.E. Nachman, C. Rock, K.J. Schwab *Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health, USA Journal of Hospital Infection (2021) 117, 52-64
背景
医療関連のノロウイルスアウトブレイクは、医療スタッフに大きな負荷をかけている。しかしながら、環境サービス従事者は汚染されている可能性のある表面との接触が多いにもかかわらず、研究されていないままである。医療環境サービス従事者におけるノロウイルス感染症のリスクの大きさを理解することで、従事者を保護し感染制御を向上できる可能性がある。
目的
本研究では、ノロウイルス陽性患者の病室において消毒も保護具もなしと想定して、保護されていない環境サービス従事者が、媒介物に 1 回接触した後のノロウイルス感染リスクをシミュレートした。さらに、ノロウイルスに曝露された環境サービス従事者による、二次的な表面からの伝播リスクをシミュレートした。
方法
二次元モンテカルロシミュレーションと文献から抽出したパラメータを用いた定量的微生物リスク評価を使用して、ノロウイルスの供給源(患者の嘔吐物/下痢)、場所(浴室/患者病室)および標的とする転帰(環境サービス従事者/二次的な疾病)によって定義される、複数の媒介物との接触シナリオによるノロウイルス感染を推定した。
結果
保護されていない環境サービス従事者の推定される最大のノロウイルス感染リスクは、ノロウイルス陽性患者が下痢を発症した病室での媒介物との 1 回の接触では 33%(1:3)である。患者の嘔吐の発症は、下痢の発症よりも 4 桁小さい媒介物接触リスクの推定値をもたらす。下痢の発症に続く 1 回の媒介物への曝露後に、共通の表面に接触したことによる二次的な疾病の推定リスクは 25%(1:4)にまで達した。
結論
個人防護具と消毒が適切に用いられない場合、1 回の媒介物との接触によって環境サービス従事者にかなり大きなノロウイルス感染リスクがもたらされる可能性がある。環境サービス従事者はウイルスを二次的な表面に移動させ、さらなる感染を引き起こす可能性もある。ノロウイルスの媒介物の移動を減らし、患者とスタッフを院内感染から守るためには、介入が必要である。
監訳者コメント:
ノロウイルス患者がいた場合に環境サービス従事者(清掃担当者)のリスクってどれくらいなんだろう、という疑問にモンテカルロシミュレーションを用いて答えた論文。思った以上に高いリスクに「本当?」と思わなくもないが、清掃担当者への感染対策教育には使えるデータである。
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