模擬股関節全置換術における層流換気と乱流換気の比較:コロニー形成単位、粒子、およびエネルギー消費の測定結果★★
Laminar airflow versus turbulent airflow in simulated total hip arthroplasty: measurements of colony-forming units, particles, and energy consumption L.V. Marsault*, C. Ravn, A. Overgaard, L.H. Frich, M. Olsen, T. Anstensrud, J. Nielsen, S. Overgaard *Odense University Hospital, Denmark Journal of Hospital Infection (2021) 115, 117-123
背景
関節置換術のための手術室における最適な換気方式については、何十年にもわたり議論されてきた。最近、世界保健機関は、複数の論文に基づいてその推奨内容を変更し、これらの論文はそれ以来批判されている。換気が経済および環境に及ぼす影響も、現在は重要な研究テーマとなっているが、十分な研究は行われていない。
目的
標準化された模擬股関節全置換術の実施時に、層流換気および乱流換気の大型・大容量システムの性能を、コロニー形成単位(cfu)、微粒子数、およびエネルギー消費について比較すること。
方法
2 つの同じ手術室を用いて、模擬股関節全置換術を実施した。2 つの手術室の唯一の違いとして、片方は層流換気を、もう一方は乱流換気を備えていた。cfu(浮遊細菌数)および微粒子数のサンプリングは、手術室の重要な地点で採取し、エネルギーは各模擬試験実施時に測定した。合計で、32 件の模擬手術を実施した。
結果
層流換気は乱流換気と比較して、100%給気量および 50%給気量の両方において、cfu(浮遊細菌数)および微粒子数が有意に減少した。さらに、給気量を 50%減らすことで cfu(浮遊細菌数)または 粒子には有意な影響はみられないが、新鮮な外気の給気量を 100%から 50%に減らすことでエネルギー消費が有意に減少することが示された。乱流換気下で実施したほとんどの模擬手術は、クリーンルームの要件を満たさなかった。
結論
層流換気では、100%給気量および 50%給気量の両方において cfu(浮遊細菌数)が有意に低かった。層流換気を備えた手術室において新鮮給気量を 50%減らすことでエネルギー消費が有意に減少した可能性があるが、cfu(浮遊細菌数)および微粒子数は依然として、股関節全置換術に必要とされる ISO 分類基準を満たさなかった。
監訳者コメント:
人工関節感染予防における層流換気の是非はいまだに決着がつかない理由として、①感染率が低いため分母としての症例数が多数必要であり、②術後 2 年までは術後感染の経過観察が必要であるため、費用的・時間的にも無作為化比較試験ができないことによる。層流換気において新鮮外気の給気を 50%減らしても微粒子数と浮遊菌数においては有意差がなく、ISO の要求基準を満たし、同時に消費エネルギーを減らすことが可能であったことから、関節置換術における層流換気の必要性とエネルギー節減を提案している。
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