入院患者における薬剤師主導の教育による抗菌薬適正使用支援介入と、それが抗菌薬使用に及ぼす影響:システマティックレビューおよび記述的統合

2021.09.30

Pharmacist-led education-based antimicrobial stewardship interventions and their effect on antimicrobial use in hospital inpatients: a systematic review and narrative synthesis

T. Monmaturapoj*, J. Scott, P. Smith, N. Abutheraa, M.C. Watson
*University of Bath, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 115, 93-116


背景

抗菌薬適正使用支援プログラムは抗菌薬使用を最適化し、抗菌薬耐性に取り組む方法である。薬剤師はこのプログラムの重要な担い手となることが多い。とはいえ、病院内の抗菌薬適正使用支援介入が薬剤師により主導される場合の有効性については、これまで報告されていない。

 

目的

入院患者における薬剤師主導の抗菌薬適正使用支援介入が、抗菌薬使用の改善に及ぼす有効性を評価すること。

 

方法

一般的なシステマティックレビュー法を使用した。以前の Cochrane レビューで使用された検索方法とデータベースを適用した。薬剤師主導の抗菌薬適正使用支援介入について報告した研究を対象とした。結果を報告するために記述的統合を用いた。PRISMA ガイドラインに従った。

 

結果

検索し、選択した 6,971 報のうち、フルテキストの論文 52 報を対象とした。大部分の研究は教育病院で実施され(45 報)、北米で実施されたものが多かった(27 報)。若手医師または病棟医師に対する介入がもっとも多く、介入期間は 1 か月から 6 か月であった。すべての研究で教育的介入(しばしば他の介入と併用)が評価され、「抗菌薬適正使用支援の目標に向けた実践の遵守に関して」改善が報告された。複合的な介入により、遵守率はより高まった。薬剤師主導の介入により、抗菌療法の期間が短縮し、死亡率の増加はみられなかった。介入と入院期間の短縮との関連においてエビデンスの一貫性は得られず、介入と抗菌薬耐性またはクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)による感染症との関連においても同様であった。

 

結論

本稿は、入院患者における薬剤師主導の抗菌薬適正使用支援介入の有効性を評価した最初のシステマティックレビューである。ガイドライン遵守の向上および抗菌療法の期間の短縮を図るために、教育による介入は有効であった。抗菌薬適正使用支援介入とプログラムを提供し推進するために、今後の病院内の抗菌薬適正使用支援プログラムでは、薬剤師の関与を検討すべきである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

抗菌薬適正使用支援(AS)はそもそも、医師の抗菌薬療法に関する知識不足に起因している。感染症専門医など造詣の深い医師等から、診療支援を受けるのは従来はコンサルテーションに限定されていた。一方で、感染症患者対応は投薬履歴、抗菌薬血中濃度測定と評価、薬剤耐性菌の評価等、1患者あたりの評価項目は多く、医師のみならず、看護師、薬剤師、臨床検査技師等多くの医療従事者が関わり推進することが本来望ましい。

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