ペニシリンアレルギー表示の削除が WHO による抗菌薬の AWaRe 分類に及ぼす影響:後向きコホート研究
The impact of penicillin allergy de-labelling on the WHO AWaRe antibiotic categories: a retrospective cohort study N. Powell*, R. West, J.A.T. Sandoe *Royal Cornwall Hospitals NHS Trust, UK Journal of Hospital Infection (2021) 115, 10-16
背景
WHO の AWaRe 分類では、抗菌薬を適正に使用するために、「Access」「Watch」「Reserve」という3 つのグループに分類している。Access グループには、他の 2 つのグループの抗菌薬よりも耐性の可能性が低い抗菌薬が含まれる。英国における 5 年間の抗菌薬耐性(AMR)対策では、非 Access グループの抗菌薬の使用の削減目標が設定されている。ペニシリン系薬の大部分は Access グループに属するため、ペニシリンアレルギーの記録がある患者は、非 Access グループの抗菌薬が処方される可能性が高い。本研究の目的は、ペニシリンアレルギーの記録が、非 Access グループの抗菌薬処方に及ぼす影響を定量化するとともに、ペニシリンアレルギー表示の削除により、非 Access グループの抗菌薬使用が削減される可能性を推定することである。
方法
英国の 750 床の地域総合病院において 2018 年 4 月 1 日から 2019 年 3 月 31 日に抗菌薬を処方された入院患者を対象とした。変数は、年齢、性別、併存疾患、感染症の治療、抗菌薬使用量、入院期間、ペニシリンアレルギーの状況とした。患者特性と、Access グループおよび非 Access グループの抗菌薬処方との関連を検討するために、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。
結果
入院患者 23,356 例における抗菌薬処方 67,059 件について分析した。入院患者の 14.3%でペニシリンアレルギーの記録があった。ペニシリンアレルギーの記録がある患者では、非 Access グループ(すなわち、Reserve グループ、Watch グループ)の抗菌薬を処方される割合が約 4 倍高かった(オッズ比 4.7)。ペニシリンアレルギーの記録がある入院患者の 50%の表示を削除することで、非 Access グループの抗菌薬使用量を 5.8%、抗菌薬の総使用量を 0.86%削減できると推定される。
結論
ペニシリンアレルギーの記録は、非 Access グループの抗菌薬処方と関連する。ペニシリンアレルギーの記録の削除により、非 Access グループの抗菌薬使用量が減る可能性がある。
監訳者コメント:
ペニシリンアレルギー表示の削除がもたらす、診療上の不都合はないということだろうか?ペニシリンアレルギーありと表記されている内容の信憑性が問われる。
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