病院関連感染における抗菌薬使用パターン
Patterns of antibiotic use in hospital-acquired infections T. Sevin*, C. Daniau, S. Alfandari, E. Piednoir, C. Dumartin, H. Blanchard, L. Simon, A. Berger-Carbonne, S. Le Vu *Santé publique France, France Journal of Hospital Infection (2021) 114, 104-110
背景
入院患者における抗菌薬使用のモニタリングは耐性選択のリスクゆえに極めて重要である。本研究の目的はフランスで最も頻度の高い医療関連感染症(HAI)に対する抗菌薬の処方パターンについて述べ、薬剤および微生物学的データを関連付けることであった。
方法
我々は入院患者に関する大規模な国の代表サンプル調査であるフランスでの 2017 年の HAI と抗菌薬使用の点有病率調査のデータを使用した。どの分子にどの病原体を標的とさせたのかを耐性プロファイルを考慮して明らかにするため、抗菌薬レジメンの個別の適応症と HAI の部位との明確な対応関係を探求した。
結果
病院 401 施設の 75,698 例の成人患者のうち 5.1%が活動性の HAI を有しており、4.3%が HAI の治療を受けていた。最も頻度の高い 2 つの抗菌薬の適応症は下気道感染症(27.7%)および尿路感染症(UTI、18.4%)であった。下気道感染症に対して最も処方された抗菌薬はアモキシシリン・クラブラン酸(27.6%)であり、最も高頻度に分離された病原体(それぞれが分離株の約 17%を占めた)は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および大腸菌(Escherichia coli)であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による下気道感染症はリネゾリドで治療される傾向が強かった。UTI に対してはオフロキサシン、セフトリアキソン、アモキシシリン/アモキシシリン・クラブラン酸が最も処方されており(それぞれ約 13%)、主に大腸菌が分離された(52.0%)。基質特異性拡張型β – ラクタマーゼ産生大腸菌による UTI はホスホマイシン、ピブメシリナムまたはエルタペネムで治療される傾向が強かった。
結論
本研究では、最もよく見られる HAI を有する患者の微生物学的情報との関連で抗菌薬使用のベースラインを示している。これらの結果は抗菌薬適正使用支援における今後の直接的な取り組みに役立つ可能性がある。我々の研究はより幅広い人口集団に、特に同様の調査が実施されている欧州に拡げられる可能性がある。
監訳者コメント:
この論文は点有病率調査(PPS; point prevalence survey)の手法を用いて実施された。PPSは、ある時点でのデータを横断的に収集解析する方法であり、欧州を中心に広く行われている。
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