新規デザインの尿道カテーテルは流体力学に影響を及ぼすことで in vitro でのバイオフィルム形成を抑制する★
A new urinary catheter design reduces in-vitro biofilm formation by influencing hydrodynamics A.C. Ionescu*, E. Brambilla, M.C. Sighinolfi, R. Mattina *University of Milan, Italy Journal of Hospital Infection (2021) 114, 153-162
目的
バイオフィルム形成を抑制することを目的とした異なる流体力学特性に基づく新規カテーテルデザインの性能を評価すること、またこれについて従来のフォーリーカテーテルと比較すること。
方法
新規提案デザインのカテーテルは、フォーリーカテーテルを改良したもので、バルーンの非対称の配置、ならびに追加のドレナージホールにより継続的な尿ドレナージおよび膀胱からの完全な排尿を可能にしている。第 1 の実験は、ドレナージ能を評価するために実施し、第 2 の実験は膀胱をシミュレートするよう設定したバイオリアクターを用い、流水システムとして試験カテーテルを用いて実施した。カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)と関連する 5 種類の細菌によるバイオフィルム形成を、24 時間のインキュベーション後に MTT 試験を用いて評価した。形態学的評価を、走査型電子顕微鏡を用いて実施した。In vitro での残尿量の測定による評価、ならびに膀胱内および試験カテーテルの内腔部分におけるバイオフィルム形成に関する定量的および形態学的データの評価を行った。
結果
残尿量は、フォーリーカテーテル(5.60 ± 0.43 mL)のほうが、新規提案デザインのカテーテル(0.2 ± 0.03 mL)よりも有意に多かった。新規提案デザインのカテーテルでは、フォーリーカテーテルよりもバイオフィルム形成が有意に少ない(P <0.0001)ことが示された。カテーテルのデザインがバイオフィルム形成に及ぼす影響は、試験対象とした細菌株によってばらつきがあった。いずれのカテーテルでも、カテーテル内腔の微生物量は、膀胱内の微生物量より有意に少なかった(P <0.0001)。すべての試験株について、多層バイオフィルムがフォーリーカテーテル表面を完全に覆っているのが認められたのに対し、新規提案デザインのカテーテルの表面ではバイオフィルム形成は少ないことが示された。
結論
カテーテルの流体力学特性を変えることで、細菌の定着が有意に抑制された。化学的、機械的および形態学的要素を組み合わせた統合的なデザイン手法は、CAUTI の発生を抑制する上で有用となり得る。
監訳者コメント:
EU 諸国では、尿道カテーテル関連尿路感染症は病院内で発生する尿路感染症の 80%を占めており、米国の介護施設入所者の5 ~ 8%にカテーテルが挿入されていると推定されている。尿路カテーテル挿入後に発生するバイオフィルム形成や膀胱内の尿うっ滞が感染症の原因となるため、「長期留置しない、尿バッグを膀胱より高く置かない、無菌的に管理する」などの日常的な感染予防対策を実施している。これまで銀や抗菌薬コーティングのカテーテルが使用されているが、カテーテルの構造的アプローチはほとんどなく、細菌の定着後のバイオフィルム形成を抑制し、尿うっ滞を最小限にすることで感染症発生防止につながる可能性がある。本論文では新たな発想のもとに開発された尿路カテーテルの性能をin vitroで実験し、その有効性が示唆されており、今後臨床現場での検討結果が待たれる。
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