南アジアから英国に帰国した旅行者の便中大腸菌(Escherichia coli)における blaCTX-M をコードするプラスミドの分子特性の解明
Molecular characterization of plasmids encoding blaCTX-M from faecal Escherichia coli in travellers returning to the UK from South Asia E.R. Bevan*, M.J. Powell, M.A. Toleman, C.M. Thomas, L.J.V. Piddock, P.M. Hawkey *University of Birmingham, UK Journal of Hospital Infection (2021) 114, 134-143
背景
医療関連感染(HAI)は、かなりの罹患および死亡の原因である。銅は実験条件下では強い抗菌特性を示すようである。
背景
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌(Escherichia coli)は、世界的に検出率が上昇しつつあり、プラスミドによる blaCTX-M 拡散によるものが優勢である。西欧から南アジアを訪れた旅行者では、便中に CTX-M 産生 E. coli(CTX-M-EC)の高い獲得率が認められる。
目的
南アジアへの旅行後に健康被験者が獲得した CTX-M-EC の接合能、旅行により獲得された CTX-M-EC において blaCTX-Mがプラスミド上でコードされたものと細菌染色体上でコードされたものの割合、ならびに旅行により獲得された CTX-M-EC プラスミドと配列が決定済みのプラスミドとの類縁性を明らかにすること。
方法
南アジアを訪れた被験者 23 例から旅行前および旅行後に便サンプルを採取し、CTX-M-EC の培養を行った。ショートリードおよびロングリードシークエンシングにより、10 のプラスミド配列が明らかになり、配列が決定済みの GenBank のプラスミドと比較した。フィルター接合法を用いて E. coli K-12 との接合を確認した。
結果
検討した CTX-M-EC 分離株の 35%が、接合により blaCTX-M プラスミドを伝達した。旅行により獲得された CTX-M-EC 分離株のうち、62%はプラスミド上に blaCTX-M を保有していた一方、38%は染色体上に blaCTX-M を保有していた。南アジアへの旅行後に獲得された CTX-M-EC プラスミドは、ヒト、動物および自然環境において広く拡散が認められる報告済みの流行プラスミドとの相同性が高かった。
結論
世界的に蔓延している流行プラスミドは CTX-M-EC の拡散に関与している。医療環境における感染予防・制御の取り組みの一環として、対象を絞った戦略を用いることで、こうしたプラスミドを宿主細菌株から除去できる可能性がある。blaCTX-M プラスミドを保有する細菌は、健康被験者によって容易に獲得され、英国への帰国により持ち込まれ、さらなる拡散の機会をもたらす。
監訳者コメント:
世界的な ESBL 産生菌の拡散は、限られた拡散性の高いプラスミドが原因で、そういったプラスミドの除去によって、拡散を防止できるのではないかと主張しているが、実臨床でそのような除去治療?ができるのかは疑問である。いずれにせよ耐性菌まん延地域への旅行では、こういった耐性菌を獲得して帰国するリスクについて理解しておく必要がある。
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