COVID-19 関連肺アスペルギルス症の発生率、診断、転帰:システマティックレビュー

2021.07.31

Incidence, diagnosis and outcomes of COVID-19- associated pulmonary aspergillosis : a systematic review

W.H. Chong*, K.P. Neu
*Albany Medical Center, USA

Journal of Hospital Infection (2021) 113, 115-129


COVID-19 関連肺アスペルギルス症は、COVID-19 患者に発生する侵襲性肺アスペルギルス症と定義される。本レビューの目的は、COVID-19 関連肺アスペルギルス症と診断された入院患者の発生率、特性、診断基準、バイオマーカー、転帰を検討することである。Pubmed、Web of Science のデータベースで、2020 年 1 月 1 日から 2021 年 3月 20 日までに発表された論文の文献検索を実施した。COVID-19 患者 1,421 例のうち、COVID-19 関連肺アスペルギルス症の全発生率は 13.5%(2.5% ~35.0%)であった。大部分の患者が侵襲的人工換気を必要とした。COVID-19 発症から COVID-19 関連肺アスペルギルス症診断までの期間は 8.0 日 ~ 16.0 日と幅があった。一方、集中治療室(ICU)入室、侵襲的人工換気開始から COVID-19 関連肺アスペルギルス症診断までの期間は、それぞれ 4.0 日 ~ 15.0 日、3.0 日 ~ 8.0 日であった。もっともよく使用される診断基準は、修正 AspICU-Dutch/Belgian Mycosis Study Group および IAPA-Verweij et al の基準であった。患者の 77.6%が下気道培養陽性を示し、そのほか真菌バイオマーカーである気管支肺胞洗浄液中および血清中のガラクトマンナンは、それぞれ患者の45.3%、18.2%で陽性であった。抗真菌薬の広範な使用にもかかわらず、COVID-19 関連肺アスペルギルス症による死亡率は48.4%と高かった。入院日数(16.0 日 ~ 37.5 日)および ICU 在室日数(10.5 日 ~ 37.0 日)の長期化が確認された。COVID-19 関連肺アスペルギルス症患者は、侵襲的人工換気が 13.0日 ~ 20.0 日と長期に及んだ。COVID-19 関連肺アスペルギルス症の標準的な診断基準が不十分なため、診断には限界があり、真の発生率はおそらく不明なままである。とくに検査前確率が低い臨床症状では、診断は呼吸器検体におけるアスペルギルスの直接的または間接的検出による微生物学的データのみに頼っている。COVID-19 関連肺アスペルギルス症の最適な診断アプローチを明らかにするために、十分にデザインされた多施設共同研究が必要とされる。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

新型コロナウイルス感染症発症後、アスペルギルス性肺炎が発生する場合がある。日本呼吸器学会認定病院715施設の呼吸器疾患部門の主任医師を対象として、Google Formを用いたインターネット質問票調査を実施したところ、肺アスペルギルス症を発症したのは7施設から10人のみという結果と低かった(0.085%)(Takazono T, et al. COVID-19 associated pulmonary aspergillosis: a nationwide survey by the Japanese Respiratory Society. ERJ Open Res 2021; https://doi.org/10.1183/23120541.00402-2021.)。さらなる疫学調査が必要であろう。新型コロナウイルス感染症発症後には様々な免疫抑制剤が使用されたり、もともと免疫抑制剤を使用しているハイリスク患者が多かったりするため健常人が新型コロナウイルス感染症発症した場合とハイリスク患者の場合を分けて分析する必要があろう。

 

 

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