手術室の空気汚染の潜在的な発生源:予備的研究

2021.07.31

Potential sources of operating room air contamination: a preliminary study

J.G. Brock-Utne*, J.T. Ward, R.A. Jaffe
*Stanford University School of Medicine, USA

Journal of Hospital Infection (2021) 113, 59-64


背景

Neptune® 手術吸引システムおよび Bair Hugger® 強制空気加温装置はいずれも、ろ過した排気または加温空気を手術室へ排出するが、手術部位に極めて近いところに排出することが多い。

 

目的

このろ過の有効性を評価するため、装置の排出口から排出される微生物コロニーの量と特性を手術室に入る循環空気から得た微生物コロニーと比較して検討した。

 

方法

制御された流量で一定量の空気を血液寒天培地に吹き付ける業界標準のサンプル採取装置を用いて、空気サンプルを各装置から採取した。12 の手術室を試験した。サンプル培地は試験プロトコールにしたがって 1 週間培養され、その後コロニー数の読み取りが行われ菌種同定のために送られた。

 

結果

Neptune® 手術吸引システムの排気由来の平均コロニー数は室内の空気サンプルから得られたコロニー数と有意差はなかったが、Bair Hugger® の排気由来の平均コロニー数は室内の空気より有意に高かった(P = 0.0086)。遺伝学的に同定した特性により発生源に応じて異なる環境微生物または共生生物の存在が明らかになった。両装置のコロニー数のばらつきが大きいことにより、特定の Neptune® 手術吸引システムと Bair Hugger® 装置は手術室の空気汚染の有意な発生源である可能性が示唆された。

 

結論

我々の研究により Bair Hugger® 患者加温装置は手術室の空中微生物汚染の発生源となる可能性があり、個別の Bair Hugger® および Neptune® 手術吸引システムユニットは、流入する室内空気と比較して予想されるものより高いコロニー数の微生物を排出することが示された。我々はこれらのリスクを軽減する方法について簡単な提案をする。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

ベアーハガー社のホームページには「SSI の原因となったという研究報告はない」と記載されている。本研究も「室内の空気汚染につながる可能性がある」とするもので「SSI が増えた」とするものではない。しかし、あらためて本研究はこのような視点を引き続き持ち続けることが重要であることを示唆している。

 

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