外科手術中の創傷部の空中浮遊菌濃度と関連する換気システムの設計条件:システマティックレビュー

2021.07.31

Ventilation design conditions associated with airborne bacteria levels within the wound area during surgical procedures: a systematic review

A. Aganovic*, G. Cao, T. Fecer, B. Ljungqvist, B. Lytsy, A. Radtke, B. Reinmüller, R. Traversari
*The Arctic University of Norway, Norway

Journal of Hospital Infection (2021) 113, 85-95


換気システムの設計条件(類型、空気流量)を確認せずに、一方向流型システムを超清浄空気換気システムと同等であるとみなす習慣は、誤解を招く恐れがあり、同時に、一方向流型システムの無効性に関するいかなる主張も疑うべきである。本レビューの目的は、創傷部から 50 cm 以内の超清浄空気(平均 10 コロニー形成単位[cfu]/m3 未満)について報告されている換気システムの設計条件を評価・比較することである。創傷部近傍における術中空中浮遊菌濃度(cfu/m3)、ならびに換気システムの設計条件を報告した研究を特定し選択するために、6 つの医療データベースを系統的に検索した。手術室にいる人数、ドアを開ける回数、衣類の素材などの交絡因子に関する入手可能なデータも含めた。空中浮遊菌濃度の平均が 10 cfu/m3 未満となる予測因子を、罰則付き多変量ロジスティック回帰モデルを用いて同定した。12 報の研究が適格基準を満たしており、分析の対象とした。検討した一方向流型システムは、乱流換気システムと比較して空気量の流量が有意に大きかった。一方向流型換気システムを備えた手術室(7 室)の全室で超清浄環境が報告されたのに対して、乱流換気システムを備えた手術室(11 室)では4 室であった。多変量解析では、総換気回数(P = 0.019、オッズ比[OR]95%信頼区間[CI]0.66 ~ 0.96)と衣類素材の種類(P = 0.031、OR 95%CI 0.01 ~ 0.71)が、平均空中浮遊菌濃度 10 cfu/m3 未満の達成と有意に関連した。空気流速度および天井ディフューザーのサイズに関する DIN 1946-4:2008 基準に準拠した大容量一方向流型システムは、無条件に創部近傍における超清浄空気を生成する。結論として、レビューした研究論文により、大容量一方向流型システムは、超清浄空気システムとして機能し、乱流換気システムよりも創部近傍における空中浮遊菌濃度の低減に優れていることが明らかにされた。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

無菌野を形成し、感染予防を徹底するためには術野へのHEPAフィルタろ過した層流が標準的である。層流を乱すことなく創部に達して汚染を防ぐには、たとえば整形外科領域ではよりターゲットした装置も開発されている。

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