医療関連感染症予防のための e ヘルス:スコーピングレビュー★★
eHealth for the prevention of healthcare-associated infections a scoping review R.G. Bentvelsen*, E. Holten, N.H. Chavannes, K.E. Veldkamp *Leiden University Medical Center, The Netherlands Journal of Hospital Infection (2021) 113, 96-103
背景
スマートフォン使用とモバイルヘルスアプリケーション(アプリ)の増加から、臨床診療において医療関連感染症(HAI)の減少・検出のためにアプリが用いられるようになる可能性がある。
目的
HAI 予防を目的として利用可能なアプリに関する概観を、臨床的に関連のあるアプリの選択および機能性、品質および有用性の評価により提供すること。
方法
本スコーピングレビューでは iOS および Android のアプリストアで利用可能なアプリを対象として、著者らが開発したツール(scraper:https://holtder.github.io/talos)を用いて、HAI 予防にとって関連のある利用可能なアプリを系統的に集約した。これらのアプリを、機能性について評価し、品質についてMobile Application Rating Scale(MARS)を用いて評価し、また臨床現場の感染症予防における使用可能性について評価した。
結果
検索項目146個を用いて、scraper を CDC の HAI トピックについて適用した結果、関連可能性のあるアプリが 92,726 個特定され、このうちアプリ 28 個が組み入れ基準を満たした。これらのアプリの大部分は、情報提供(アプリ 28 個中 27 個)または教育(28 個中 20 個)の機能を有している。アプリ 28 個 における MARS スコアは、機能性(5 点中 4.19 点)、審美性(5 点中 3.49 点)、および情報(5 点中 3.74 点)の領域では高く、関与(5 点中 2.97 点)では比較的低く、結果として平均スコアは良好であった(5 点中 3.57 点)。
結論
関与のスコアが低かったことで、情報提供または教育を目的とするアプリは限られるが、これはおそらく、これらのアプリの開発の多くが学術目的であるためと考えられる。HAI 予防アプリの数は 5 年間で 60%増加しているが、臨床的に関連のあるアプリは限られている。HAI アプリの品質におけるばらつき、および利用者の関与が欠如していることは、臨床環境における共同製作・開発により改善できるであろう。
監訳者コメント:
「m Health」とは世界保健機関 WHO は「モバイルデバイスによる医療活動および公衆衛生活動」と定義しており、あるいは eHealth とも呼ばれる。2015 年の WHO の調査では 83%の国で少なくとも一つの政府公認の eHealth のアプリケーションが動いている。一方で、医療関連感染に関するアプリケーションはほとんどないのが現状であり、2019 年の検索時には手指衛生や手術部位感染症予防があるのみで、一般的に利用できない限定的な状況であった。モバイル端末の普及によりさらならアプリケーションが開発され、また現在の新型コロナ感染症の流行により、健康監視やリモート診療、感染予防に関するアプリケーションの開発が一気に加速されるであろう。
訳注)「スコーピングレビュー」とは、「文献の総体がまだ包括的にレビューされたことがないケース、あるいはその内容が膨大、複雑、または異質性がみとめられるなどの理由で、より厳密な系統的レビューを行うのに適していない場合」(https://guides.temple.edu/c.php?g=78618&p=4156607)
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