オーストラリアの嚢胞性線維症の成人集団におけるクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)の保菌および感染
Clostridioides difficile colonization and infection in a cohort of Australian adults with cystic fibrosis A.S. Tai*, P. Putsathit, L. Eng, K. Imwattana, D.A. Collins, S. Mulrennan, T.V. Riley *Sir Charles Gairdner Hospital, Queen Elizabeth II Medical Centre, Australia Journal of Hospital Infection (2021) 113, 44-51
背景
嚢胞性線維症(CF)患者におけるクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)についてはほとんど分かっていない。本研究の目的は、西オーストラリア州の無症候性および症候性 CF 成人における CDI の有病率、分子疫学およびリスク因子を検討することであった。
方法
症候性および無症候性患者の糞便サンプルを前向きに採取し、毒素産生性検査培養によって C. difficile の存在を検査した。確立されたプロトコールによってリボタイピングを行った。C. difficile の保菌および感染のリスク因子を分析するため、ロジスティック回帰分析を実施した。パースの CF 診療所内で広範囲の環境サンプリングを実施した。
結果
毒素産生性および毒素非産生性 C. difficile の無症候性保菌の有病率はそれぞれ 30%(患者 46 例中 14 例)、24%(患者 46 例中 11 例)であった。C. difficile の 15 のリボタイプが同定され、そのうち毒素非産生性 RT 039 が最もよく見られた。症候性患者において毒素産生性 CDI の有病率は 33%(患者 33 例中 11 例)であった。耐糖能障害/糖尿病および過去 12 か月における抗菌薬の静脈内使用の期間は、毒素産生性 C. difficile の無症候性保菌および CDI のリスク増加に有意に関連していた。CDI 群では CF 膜コンダクタンス制御因子調節薬による治療が多い傾向が認められた。CF 診療所内の広範囲の環境サンプリングでは、毒素産生性 C. difficile による汚染のエビデンスは示されなかった。
結論
CF 成人において毒素産生性 C. difficile の無症候性保菌の高い有病率が認められ、症候性 CF 集団における有病率と同程度であった。直接的なヒト-ヒト伝播のエビデンスは認められなかった。
監訳者コメント:
嚢胞性線維症(CF)患者における無症候性のC. difficileの保有率は22~50%という報告があり、本論文でも同様の結果が得られていた。その一方、環境からの検出のエビデンスはなく、人から人への伝播は確認されなかった。本論文ではその理由については不明であるとしていた。
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