2014 年から 2020 年の東ウクライナの紛争での戦傷に由来する軍事病院関連の細菌における抗菌薬耐性の表現型・遺伝子型の特性

2021.06.30

Phenotypic and genotypic characterization of antibiotic resistance in military hospital-associated bacteria from war injuries in the Eastern Ukraine conflict between 2014 and 2020

 

V. Kondratiuk*, B.T. Jones, V. Kovalchuk, I. Kovalenko, V. Ganiuk, O. Kondratiuk, A. Frantsishko

*National Pirogov Memorial Medical University, Ukraine

 

Journal of Hospital Infection (2021) 112, 69-76

 

 

背景

ウクライナの最近の紛争に由来する感染症はほとんど調査されていない。

 

目的

ウクライナの紛争での戦傷に関連する病原体における抗菌薬耐性の表現型および遺伝子型のメカニズムについて述べること。

 

方法

本報告では、2014 年から 2020 年の間にウクライナの軍事病院 4 施設で実施された後向き多施設共同微生物学的調査について述べた。患者 162 例の 1,061 件の検査から取得した 813 の微生物の表現型を解析した。52 の分離株に全ゲノムシークエンシングを行った。

 

結果

アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の耐性が最も高く、フルオロキノロンへの耐性は 92.5%(48/52、95%信頼区間[CI]81.8 ~ 97.9)、アミノグリコシドへの耐性は 83.0%(43/52、95%CI 70.2 ~ 91.9)、カルバペネムへの耐性は 67.9%(37/52、95%CI 53.7 ~ 80.1)であった。対照的に、カルバペネムへの耐性は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)では 55.6%(30/52、95%CI 41.4 ~ 69.1)、大腸菌(Escherichia coli)では 42.9%(12/28、95%CI 24.5 ~62.8)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)では 32.8%(20/34、95% CI 21.3 ~ 46.0)であった。多剤耐性株は多数の抗菌薬耐性遺伝子を保有していた。肺炎桿菌はクラス A および D のβ – ラクタマーゼを、1 症例では blaNDM-1 および rmtC 16S rRNA メチルトランスフェラーゼとともに同時産生した。A. baumannii はクラス A および D のβ – ラクタマーゼを保有していたが、メタロβ– ラクタマーゼは保有していなかった。4 つの分離株ではカルバペネマーゼは RmtASE 遺伝子 armA とともに存在していた。緑膿菌は RmtB4 RmtASE 遺伝子だけでなく広範囲のクラス A および D のβ – ラクタマーゼもメタロβ – ラクタマーゼとともに保有していた。グラム陽性球菌は概して検査した抗菌薬に感受性を示した。

 

結論

調査した病原体の耐性率はウクライナの市民病院および欧州諸国での耐性率よりも高かった。カルバペネマーゼと RmtASE を同時産生する緑膿菌、A. baumannii、肺炎桿菌の発見は特に重要であり、病院はそれらの出現を警戒すべきである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

戦地・戦争関連での耐性菌の伝播と流行は以前から報告されているが、「なぜ」耐性菌の検出率が上昇するのかはよく分かっていない。戦地病院では十分な感染対策や抗菌薬の適正使用が行えないことも要因の一つと考えられる。日本では戦争はないが、自然災害時には病院も戦時と同様の状況に置かれることもあるかもしれない。災害時の医療における薬剤耐性菌対策について考えるきっかけになるかもしれない。

 

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