セルビアの新生児集中治療室における OXA-72 産生アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)ST636 のアウトブレイクの臨床的・分子的特性
Clinical and molecular characteristics of OXA-72- producing Acinetobacter baumannii ST636 outbreak at a neonatal intensive care unit in Serbia
I. Gajic*, M. Jovicevic, M. Milic, D. Kekic, N. Opavski, Z. Zrnic, S. Dacic, Lj. Pavlovic, V. Mijac
*University of Belgrade, Serbia
Journal of Hospital Infection (2021) 112, 54-60
目的
セルビアの新生児集中治療室(NICU)1 室の早産新生児におけるアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)のアウトブレイクについて述べること。
方法
セルビア・ベオグラードの新生児学研究所の NICU において症例対照研究を実施した。A. baumannii 血流感染症(BSI)の症例の定義は、全身性感染症が血液培養で確認されることとした。従来法を用いて分離、同定および感受性試験を実施した。分離株の分子的特性評価には耐性遺伝子の検出、パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)および multi-locus sequence typing 法が含まれた。転帰および臨床・人口統計学的データは患者の診療記録から取得した。感染予防チームを結成し感染制御介入を実行した。
結果
アウトブレイク期間中(2018 年 5 月から 7 月)、入院している新生児 82 例のうち A. baumannii BSI 症例は 13 例であった。すべての A. baumannii 株はカルバペネム耐性、コリスチン感受性であった。PFGE パターンによりクローン性拡散が示された一方で、分離株の分子的特性評価により blaOXA66 および blaOXA72 β- ラクタマーゼを保有しシークエンス型 636 に属していることが明らかになった。より短い在胎期間、より低いアプガールスコア、経腟分娩および人工換気が A. baumannii 感染症のリスク因子であった。患者 4 例は死亡し、患者 8 例はコリスチンによる治療が成功し、敗血症と髄膜炎でアンピシリン・スルバクタムとコリスチンの併用療法を受けた患者 1 例は回復したが後遺症が残った。本アウトブレイクは重層的な介入アプローチに基づく感染制御策の強化によって最終的には制御された。
結論
本稿はセルビアで A. baumannii blaOXA66/blaOXA72/ST636 によって引き起こされた早産新生児における BSI のアウトブレイク1 件に関する最初の報告である。
監訳者コメント:
新生児におけるA. baumannii BSIのアウトブレイク調査を行った論文である。調査により感染が確認された新生児のリスク因子が特定されたが、感染源、感染経路の推測には至らなかったことは、インパクトの大きいアウトブレイクであり残念に思われた。
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