新型コロナウイルス感染症(COVID-19)アウトブレイクと、医療従事者の手指衛生実施への行動変容
COVID-19 outbreak and healthcare worker behavioural change toward hand hygiene practices
F. Huang*, M. Armando, S. Dufau, O. Florea, P. Brouqui, S. Boudjema
*Aix Marseille Université, IRD, MEPHI, France
Journal of Hospital Infection (2021) 111, 27-34
背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、臨床業務において医療従事者に影響を及ぼしている。医療従事者は職業上のリスクから自身を防御するために、新たなガイドラインと実践により問題に取り組んでいた。
目的
フランスにおけるリアルタイム評価による手指衛生行動は、流行の動き、ケアを受ける患者の特徴に関連したかどうかを明らかにすること。
方法
本研究では、COVID-19 のパンデミック状況下、病室に出入りする際の医療従事者の手指衛生を評価するために、自動手指衛生記録システムを用いた。手指衛生遵守と COVID-19 の疫学的データの相関を分析した。流行の異なる期間での遵守率を比較するために分散分析を実施した。
結果
医療従事者の入室時の手指衛生率は経時的に低下し、退室時の手指衛生率は、COVID-19 第 1 波時には 13.73%増加し、ロックダウン解除後には 9.87%低下し、その後、流行の第 2 波時には 2.82%増加に転じた。患者ケア時の手指衛生および退室時の手指衛生は、COVID-19 の地域的流行と正の相関を示した。これに対して、入室時の手指衛生は、流行の傾向にも、COVID-19 患者の看護にも関連せず、経時的に低下した。
結論
パンデミックのリスク傾向に立ち向かうために、医療従事者は行動を修正した。しかし、入室時の不良な遵守状況の改善を図るには、手指衛生推奨か手袋着用推奨かといった混乱を軽減することが必要かもしれない。手袋を着用した手指の消毒がこの問題を解決する可能性がある。
監訳者コメント:
COVID-19 パンデミック下では、伝播経路が不透明な発生期における手指衛生行動の変容や感覚的な恐怖や慣れ現象など複雑な人の心理が手指衛生実施率に大きく影響している。本来ならば、医療環境では各医療施設の患者背景に基づき実施すべきベースラインがあるはずだがそれが従来から徹底できていない医療施設ではおそらく経時的に安定した手指衛生行動はとることが困難である。
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