どの肺炎症例でステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)に対する治療を検討すべきか?★★
In which cases of pneumonia should we consider treatments for Stenotrophomonas maltophilia?
W. Imoto*, K. Yamada, G. Kuwabara, K. Yamairi, W. Shibata, K. Oshima, K. Nakaie, T. Watanabe, K. Asai, Y. Kaneko, T. Kawaguchi, H. Kakeya
*Osaka City University Graduate School of Medicine, Japan
Journal of Hospital Infection (2021) 111, 169-175
背景
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は呼吸器感染症と関連する頻度の高い病原体である。しかし、S. maltophilia による肺炎の特徴は依然として不明である。
目的
S. maltophilia による肺炎の特徴およびリスク因子について評価すること。
方法
2010 年 1 月から2019 年 12 月に喀痰培養で S. maltophilia 陽性であった患者 2,002 例を対象に後向き評価を実施した。症例の除外は、臨床情報および臨床検査結果に基づいて行った。組み入れた症例を以下の 2 群に分けた:S. maltophilia 肺炎群(S. maltophilia による肺炎の患者)および非S. maltophilia 肺炎群(S. maltophilia 以外の病原体による肺炎の患者)。患者の特徴、臨床データおよび SOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアについて群間比較を行った。
結果
患者 8 例および 91 例を、それぞれS. maltophilia 肺炎群および非 S. maltophilia 肺炎群に割り付けた。年齢中央値は S. maltophilia 肺炎群のほうが非 S. maltophilia 肺炎群より有意に低く(63.4 対 73.1 歳、P < 0.01)、SOFA スコアは S. maltophilia 肺炎群のほうが有意に高かった(7.5 対 3.0、P < 0.01)。悪性疾患が基礎にあること、ならびに抗緑膿菌活性を有するβ‐ラクタム系抗菌薬およびステロイドの投与前であることが、S. maltophilia 肺炎群の症例 8 例中 7 例で確認され、これによって免疫抑制との関連が示唆された。
結論
S. maltophilia による肺炎はまれに発生する。以下の肺炎の症例には、この病原体に対する治療を検討すべきである:(1)喀痰培養での S. maltophilia の優位性、(2)事前の広域抗菌薬の投与、(3)免疫不全状態、(4)SOFA スコア高値。
監訳者コメント:
大阪市立大学からの報告である。S. maltophiliaはカルバペネム自然耐性であり、抗緑膿菌活性のあるβラクタム系薬投与歴のある患者の喀痰でしばしば検出される。まれに肺炎を起こすことがあり、治療適応に迷うことが多い。本報告は症例数は少ないものの、S. maltophilia肺炎の特徴と危険因子を評価した点で意義が高いといえる。
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