腹部閉鎖創における局所陰圧閉鎖療法を用いた手術創感染症予防:「スワイプせよ」無作為化臨床試験
Surgical wound infection prevention using topical negative pressure therapy on closed abdominal incisions – the ‘SWIPE IT’ randomized clinical trial
A.M. Di Re*, D. Wright, J.W.T. Toh, T. El-Khoury, N. Pathmanathan, M.P. Gosselink, S. Khanijaun, S. Raman, G. Ctercteko
*Westmead Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2021) 110, 76-83
背景
手術部位感染症(SSI)は外科患者の医療関連感染症の原因として最もよくみられるものである。切開部の局所陰圧閉鎖療法が開腹手術後の患者の SSI リスクを低下させられるかどうかは明らかになっていない。
方法
開腹手術後に切開部の局所陰圧閉鎖療法を用いた場合のSSI 発生率を標準的なドレッシング法を用いた場合と比較して評価するため、前向き非盲検多施設共同無作為化比較試験(RCT)を実施した。主要評価項目は表層 SSI の発生率であった。
結果
計 124 例の患者(局所陰圧閉鎖療法群 61 例、対照群 63 例)が対象となった。109 例(87.9%)の患者が大腸手術を受け、61 例(49.2%)の患者が緊急手術を受けた。対照群では局所陰圧閉鎖療法群よりも多くの表層 SSI が認められたものの、統計学的有意差は認められなかった(20.6%対 9.8%、P = 0.1)。多重ロジスティック回帰分析では対照群のドレッシング法は表層SSI のリスク上昇に関連していたものの、また統計学的有意差は認められなかった(オッズ比[OR]2.41、95%信頼区間[CI]0.81 ~ 7.17、P = 0.11)。表層非 SSI 関連創離開は局所陰圧閉鎖療法群では認められなかったのに対し、対照群では9.5%に認められた(P = 0.03)。術後合併症(P = 0.15)に関しても他の創合併症(P = 0.79)に関しても差は認められなかった。
結論
本 RCT において、局所陰圧閉鎖療法は表層 SSI の減少に関連していなかった。しかし、局所陰圧閉鎖療法ドレッシングによって表層創離開は統計学的に有意な減少が認められた。本研究結果は、腹部閉鎖創における局所陰圧閉鎖療法のより良い評価のためのメタアナリシスに含められるべきである。
監訳者コメント:
NPWT は予防的に行う方法と治療に用いる方法に大別される。日本では NPWT は開放創にしか薬事上使用することができないが、術後感染の高リスク群における検討も行われている。本研究でも術後感染の発生頻度の高い開腹術症例(主に大腸手術)を対象に行われたが、SSI の発生率において有意差は認められなかったものの、SSI 関連創離開は NPWT 群で少なかった。まだ決定的な結論は出ているとはいえないが、今後も検討が必要な領域である。
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