全ゲノムシークエンシング解析によって非流行環境でのバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の別々の臨床分離株における vanB 保有トランスポゾンの拡散が明らかになった
Whole-genome sequencing analysis reveals the spread of a vanB-carrying transposon among different vancomycin-resistant Enterococcus faecium clinical isolates in a non-endemic setting
R.H.T. Nijhuis*, M.A. Chlebowicz-Fliss, A.E. Smilde, J.W.A. Rossen, A.J.L. Weersink, A.C.M. Gigengack-Baars
*Meander Medical Centre, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2021) 110, 52-59
背景
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、特にバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(vancomycin-resistantEnterococcus faecium;VREfm)は重篤な院内感染を引き起こす可能性があり、医療関連アウトブレイクの原因となってきた。VREfm の拡散はクローン的にも可動遺伝因子の拡散によっても生じる可能性がある。
目的
vanB VREfm のアウトブレイク中に、コアゲノム複数部位塩基配列タイピング(cgMLST)およびトランスポゾン解析の両方を含む全ゲノムシークエンシング(WGS)データの前向き解析について報告すること。
方法
一晩増菌した培地のリアルタイム PCR によって vanB 陽性の VREfm 分離株のスクリーニングを実施し、陽性の場合は継代培養を行った。vanB 陽性の VREfm 分離株は WGS を行った。得られたデータは SeqSphere を用いた cgMLST による分子タイピングに使用された。トランスポゾンの特性決定のため、配列データは CLC Genomics Workbench を用いてトランスポゾンTn1549 の参照配列に対してマッピングし、または BLASTN 比較のため新規ゲノムアセンブリを用いた。
結果
計 1,358 件のリアルタイム PCR を実施した。患者 207 例の 251 の検体が PCR で vanB 陽性となり、そのうち患者 6 例から採取された 13 の検体は培養で vanB VREfm 陽性と同定された。これらの患者 6 例は、CT118(N = 2)、CT2483(N =3)、CT2500(N = 1)、CT2501(N = 1)の 4 つのクラスター型に属する 7 つの固有の分離株を保有していた。トランスポゾン解析によって、疫学データに基づき関連づけられる患者全 6 例から培養された分離株において同一の vanB 保有トランスポゾンの存在が明らかになった。
結論
試験実施病院において 4 つのクラスター型に属する分離株を有する患者 6 例を含む vanB VREfm のアウトブレイク 1 件が発生した。詳細なトランスポゾン解析によって、クローン性拡散よりもトランスポゾン Tn1549 の拡散がアウトブレイクの原因であったことが明らかになった。
監訳者コメント:
全ゲノムシークエンシング解析を行うことで、異なる分離株が一つのアウトブレイクにつながっていることが判明した。これからの疫学調査は、分子疫学と両輪ですすんでいくのであろう。
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