入院患者における医療関連尿路感染症のサーベイランスを目的とした完全自動化アルゴリズムの正確度★★

2021.04.30

The accuracy of fully automated algorithms for surveillance of healthcare-associated urinary tract infections in hospitalized patients

 

S.D. van der Werff*, E. Thiman, H. Tanushi, J.K. Valik, A. Henriksson, M. Ul Alam, H. Dalianis, A. Ternhag, P. Nauclér

*Karolinska Institutet, Sweden

 

Journal of Hospital Infection (2021) 110, 139-147

 

 

背景

医療関連尿路感染症(HA-UTI)などの医療関連感染症のサーベイランスは、リソースを振り向け、介入の効果を評価する上で重要である。しかし、従来のサーベイランス法は、リソースの負担が大きく、バイアスを受ける可能性がある。

 

目的

電子カルテのデータを用いて、HA-UTI サーベイランスを目的とした完全自動化アルゴリズムを開発し、妥当性を検証すること。

 

方法

2010 年から2011 年までの Karolinska University Hospital における入院 2,979件の電子カルテのデータを用いて、以下の 5 つのアルゴリズムを作成した:(1)尿培養(UCx)陽性、(2)UCx 陽性+ UTI コード(国際疾病分類第 10 版[ICD-10])、(3)UCx 陽性+ UTI 治療用抗菌薬、(4)UCx 陽性+発熱および/または UTI 症状、(5)アルゴリズム 4 に加えて他に発熱の原因がなくUTI 症状なし。自然言語処理を用いて、フリーテキストの診療ノートの処理を行った。これらのアルゴリズムの妥当性を、2012 年 1 月から 3 月までの UTI エピソードの可能性例 1,258 件において検証し、その結果をこの期間中のすべての UTI エピソード(N = 16,712)に外挿した。HA-UTI の参照標準として、欧州疾病対策センター(ECDC)(次いで米国疾病対策センター[CDC])の定義に従って熟練した医療従事者が行った診療記録の手動レビューを用いた。

 

結果

UTI エピソード 1,258 件のうち、163 件が ECDC による HA-UTI の定義を満たし、5 つのアルゴリズムにより、それぞれ 391 件、150 件、189 件、194 件、および 153 件の UTI エピソードが HA-UTI に分類された。アルゴリズム 1、2 および 3 は、性能が不十分であった。アルゴリズム 4 はより優れた性能を示し、アルゴリズム 5 はサーベイランスを目的として最も性能が高く、感度 0.667(95%信頼区間[CI]0.594 ~ 0.733)、特異度 0.997(95%CI 0.996 ~ 0.998)、陽性的中率 0.719(95%CI 0.624 ~ 0.807)、および陰性的中率 0.997(95%CI 0.996 ~ 0.997)であった。

 

結論

フリーテキストにおいて UTI 症状を発見することを目的とした、自然言語処理に基づいたサーベイランス用完全自動化アルゴリズムは、診療記録の手動レビューと比較して、HA-UTI を発見する上で許容できる性能を有していた。管理データおよび微生物学的データのみに基づいたアルゴリズムは、性能が不十分であった。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

医療関連感染のサーベイランスはこれまで手動で手間暇をかけ実施してきたが、複雑化した業務の増大によりサーベイランスの実施継続と適時のフィードバックが困難となり、電子カルテによる自動サーベイランスがこれまでも試みられてきた。しかしながらアルゴリズム作成の煩雑さと最終的な人的な確認行為が必要であり、満足のゆく自動サーベイランスのシステムがない現状がある。今回は 5 つのアルゴリズムを作成し、その有用性を検討した。尿培養、尿培養+病名(ICD-10)または抗菌薬処方によるアルゴリズムだけでは UTI の自動サーベイランスには不適当であった。電子カルテ内に記載された「発熱、尿路感染症状(尿意逼迫、尿回数増加、恥骨状圧痛、CV 叩打痛、排尿障害)尿路カテーテル」などのフリーテキストを自動言語処理し、さらに尿培養に加え、血液培養を含めた UTI 以外の感染症を否定するという診断行為があることで、軽度の感度低下はあるものの、陽性予測率はさらに上昇した。電子カルテ上で自動言語処理を使用することで UTI の自動サーベイランスを良好な感度と特異度をもって実施できることが判明した。

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