リアルタイム PCR および融解曲線解析を用いた可動性コリスチン耐性遺伝子(mcr-1 から mcr-10)の迅速な検出および識別★
Rapid detection and differentiation of mobile colistin resistance (mcr-1 to mcr-10) genes by real-time PCR and melt-curve analysis
M. Mentasti*, S. David, K. Sands, S. Khan, L. Davies, L. Turner, M. Wootton
*University Hospital of Wales, UK
Journal of Hospital Infection (2021) 110, 148-155
背景
多剤耐性微生物の出現は、従来の抗菌薬、例えばコリスチンなどの、これまでに有効性が限られているとか毒性が高いなどの理由で使用されなくなっていた抗菌薬に対する新たな関心を引き起こした。ここ数年間に、染色体によりコードされたいくつかのコリスチン耐性機序が報告されており、直近では、プラスミド介在性の 10 の可動性コリスチン耐性遺伝子(mcr)が同定されている。これらの遺伝子が多剤耐性グラム陰性菌の間で拡散していることは、深刻な懸念をもたらしている。したがって、mcr を高い信頼性で適時に検出することが極めて重要である。
目的
遺伝子 mcr の検出および識別を目的としたマルチプレックス・リアルタイム PCR 法をデザインし、妥当性を検討すること。
方法
現在公開されているすべての mcr 対立遺伝子を National Center for Biotechnology Information(NCBI)の Reference Gene Catalogue からダウンロードして、Clustal Omegaでアライメントし、Primer-BLASTを用いてプライマーをデザインした。モノプレックス・リアルタイム PCR を特性が明らかにされており、幅広い耐性遺伝子を保有する 120 のグラム陰性細菌株からなるパネルを用いて、多くの場合は細菌株を組み合わせて、最適化して妥当性の検証を行った。融解曲線解析を用いて陽性結果の確認を行った。
結果
in silico 解析により、増幅阻害を考慮するために内部コントロールをアッセイと組み合わせることで、mcr-1/2/6、mcr-3、mcr-4、mcr-5、mcr-7、mcr-8 および mcr-9/10 を検出するための「スクリーニング」アッセイをデザインすることができた。次いで、mcr-1、mcr-2、mcr-6、mcr-9 および mcr-10 を識別するための「補足」アッセイをデザインした。すべての細菌株について予想された結果が得られた(感度および特異度 100%)。融解曲線解析により、一貫した融解温度結果が示された。増幅阻害は認められなかった。
結論
デザインしたアッセイは、迅速かつ容易に実施でき、バリアントが 2 つ以上存在する場合でも、mcr の検出および識別を明確に行うことができた。臨床および獣医学や医学の分野での微生物学研究室で採用されれば、グラム陰性細菌における遺伝子mcr のサーベイランスに役立つであろう。
監訳者コメント:
多剤耐性菌、特にカルバペネム耐性グラム陰性菌の出現は、過去に腎毒性や神経毒性などの副作用で使用されなくなった抗菌薬「コリスチン」を最後の切り札として再び表舞台に出すこととなった。1950 年に日本で発見されたコリスチンはグラム陰性菌のリポ多糖体に結合し外膜を破壊する殺菌的薬剤であり、耐性緑膿菌や耐性アシネトバクター・バウマニ、そして耐性腸内細菌目細菌に対しても抗菌力を保持している。2015 年にプラスミド性コリスチン耐性(mcr-1)がはじめて見つかり、これまでに 10 種類が見つかっている。本論文ではこれらの耐性遺伝子をリアルタイム PCR で検出するものである。すでに日本でもヒトから mcr-1 保有の大腸菌が検出されており、食用動物に使用する硫酸コリスチンが、これらの食品を介して人へ拡散していることが強く懸念される。
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