医療施設におけるカルバペネマーゼ産生菌に起因する死亡の疫学およびリスク因子★
Epidemiology of and risk factors for mortality due to carbapenemase-producing organisms (CPO) in healthcare facilities
S. Zhao*, S. Kennedy, M.R. Perry, J. Wilson, M. Chase-Topping, E. Anderson, M.E.J. Woolhouse, M. Lockhart
*University of Edinburgh, UK
Journal of Hospital Infection (2021) 110, 184-193
背景
カルバペネマーゼ産生菌は、カルバペム耐性の広範な拡散の主な原因であり、その有病率は世界の多くの地域で上昇しつつある。
目的
患者におけるカルバペネム産生菌の臨床および分子疫学、ならびに関連する死亡について評価すること。
方法
2003 年から 2017 年にスコットランド全域における臨床および長期療養サーベイランス培養で検出されたすべてのカルバペネマーゼ産生微生物を、後向きに検討した。PCR を用いて、カルバペネマーゼをコードする遺伝子を検出した。一般化線形混合モデルを用いて、死亡のリスク因子を特定した。
結果
全体で、290 例にカルバペネマーゼ産生菌が検出された。全検出率は、2003 年から 2017 年の間に10万人あたり 0.02 から 1.38へと経時的に上昇した(P < 0.001)。利用可能なメタデータより、214 例における分離株 269 件から、カルバペネマーゼ産生菌の異なる分離株計 243 株が得られた。分離株の大部分は腸内細菌目細菌(243 株中 206 株、84.8%)で、多かった菌種は肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(206 株中 65 株、31.6%)およびエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)(206 株中 52 株、25.2%)であった。カルバペネマーゼで最も多かったのは、VIM(243 株中 75 株、30.9%)および NDM(243株中 56 株、23.0%)であった。無補正の 30 日死亡率は 11.8%(211 例中 25 例)であった一方、症例致死率は 5.7%(211 例中 12 例)であった。年齢 60 歳超(補正オッズ比[aOR]3.36、95%信頼区間[CI]1.06 ~ 10.63、P = 0.033)、非発酵菌の検出(aOR 4.88、95%CI 1.64 ~ 14.47、P = 0.005)、ならびに全身性感染症または臓器不全(aOR 4.21、95%CI 1.38 ~ 12.81、P = 0.032)は、30 日死亡と独立して関連していた。
結論
スコットランドにおけるカルバペネマーゼ産生菌の存在率は低かったが、上昇がみられた。60 歳超の入院患者、全身性感染症または臓器不全を有する患者、ならびに非発酵菌を保有する患者ではカルバペネマーゼ産生微生物による死亡のリスクが高いことに注意する必要がある。
監訳者コメント:
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌は日本でも徐々に増えており、2014 年より「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症」が感染症法で 5 類全数報告疾患となっている。なかでもカルバペネマーぜ産生菌はプラスミド性に伝播するため、拡散しやすい。我が国と疫学上の相違があるが、参考になる。
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