退院後のクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)と病棟における過去の接触者との間にみられる遺伝子型に基づく関連★★
Genotypic correlation between post discharge Clostridiodes difficle infection (CDI) and previous unit-based contacts
N.E. Babady*, A. Aslam, T. McMillen, M. Syed, A. Zehir, M. Kamboj
*Memorial Sloan Kettering Cancer Center, USA
Journal of Hospital Infection (2021) 109, 96-100
背景
退院後にクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)と診断される症例は、新規感染症例のかなりの割合を占める。退院後の感染症発症が病院における伝播に起因するかどうかは不明である。
方法
本研究は、3 次がん治療センター(アウトブレイクの発生なし)における後向きコホート研究であった。2015 年 から 2016 年の間に臨床検査で確認されたすべての CDI 症例について、退院から 8 週間以内に退院後 CDI を発症した患者を本研究に組み入れた。退院後 CDI 症例からの分離株およびその病棟における CDI 陽性接触者を対象に、まず複数部位塩基配列タイピング(MLST)による遺伝子型決定を行った。共通に認められた分離株について、さらにコアゲノム配列決定を実施して伝播関係を評価した。
結果
MLST により調べた症例 173 例のうち、退院後 CDI の50%は病棟内接触者との一致が認められた。次いで、退院後 CDI 症例 16 例および病棟内接触者 18 例を含む、分離株 34 株をコアゲノム配列決定により調べた。このうち、いづれの分離株も3 つ以下の一塩基バリアントのものは認められなかった。退院後 CDI 症例の 70%は、退院後に CDI を発症する前に、院内で抗菌薬に曝露されていた。
結論
本研究の結果から、有症状の CDI 症例は、退院後 CDI 症例への主要な伝播源ではないことが示唆される。退院後 CDI 症例の抗菌薬曝露の頻度が高いことは、サーベイランスおよび抗菌薬管理の取り組みにおける重要な標的である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
CDI は医療関連感染の重要な原因であるが、発症までの潜伏期が数日から数週間と幅が広い。これまでの調査では医療関連感染 CDI の 4 分の 3 は市中で発症し、15%が退院後4 週間以内に起こっていることから、感染源を正確に捉えることが難しい状況にある。そこで感染源を明らかにするために、分別能の高いコアゲノムシーケンス法を使用して退院した患者と院内発症の CDI 患者との関連性を検討した。結論的には関連性は認められなかった。すなわち CD の感染はすでに病院外で発生していることが示唆され、結果的に抗菌薬の曝露が大きく関与していることが考えられ、抗菌薬適正使用の重要性がより強調されることとなった。近年、ゲノムシーケンスのコストが下がり、解析時間も短くなってきており、今後さらに CDI に関する感染経路に関する知見が集積されるものと思われる。
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