模擬ケアが、患者ケアにおける手指汚染予測の適切な代替法とならないのはなぜか?
Why is mock care not a good proxy for predicting hand contamination during patient care?
M.F. King*, A.M. Wilson, M. López-García, J. Proctor, D.G. Peckham, I.J. Clifton, S.J. Dancer, C.J. Noakes
*University of Leeds, UK
Journal of Hospital Infection (2021) 109, 44-51
背景
表面との一連の接触や手指衛生のタイミングなど医療従事者の行動は、感染症の伝播を理解する上で重要である。
目的
医療従事者の一連の行動を記録する方法を、模擬と実際の処置で比較して示すとともに、感染症リスクのモデリング使用と職員の訓練の差を評価すること。
方法
大学教育病院の呼吸器病棟において、3 種類のケア、すなわち、点滴管理、観察上のケア、医師回診における処置を、模擬と実際の設定で観察した。接触と手指衛生行動を携帯用タブレットまたはビデオカメラのいずれかを用いてリアルタイムで記録した。
結果
実際の患者ケアでは、模擬ケアよりも表面との接触が 70%多く、時間も 2.4 分長かったが、患者との接触については同程度であった。平均で、医師の回診は 7.5 分(模擬ケアでは 2.5 分)かかり、補助看護師は観察上のケアに 4.9 分(模擬ケアでは 2.4 分)かかった。登録看護師は、模擬の点滴管理では 3.2 分、実際の点滴管理では 3.8 分かかり、これは、接触の 44%増加を反映していた。患者との接触前に手指衛生が実施されたのは、実際のケアエピソードの 51%、模擬ケアエピソードの 37%であった。一方で、患者との接触後、病室退室時に手指衛生を実施したのは、実際のケアを行った職員の 15%、模擬ケアでは22%であった。病室での全体的な接触数は、手指衛生の不十分な予測因子であった。表面との接触後の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、ノロウイルスによる手指汚染を予測するモデルを用いると、模擬ケアでは、実際のケアよりも手指の微生物が約 30%低く予測された。
監訳者コメント:大学教育病院の呼吸器病棟において、点滴管理、観察上のケア、医師回診における処置を、模擬と実際の設定で観察した論文である。場面ごとの手指衛生の実施は模擬で明らかによい結果が出ていたが、完ぺきとは言えない数値であった。詳細を解析することで、手指衛生のタイミングについての問題点の抽出ができるのではないかと思われた。
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