オランダの 3 次医療施設における多剤耐性菌保菌のスクリーニングを目的とした入院時の普遍的リスク評価★
Universal risk assessment upon hospital admission for screening of carriage with multidrug-resistant microorganisms in a Dutch tertiary care centre
D. van Hout*, P.C.J. Bruijning-Verhagen, H.E.M. Blok, A. Troelstra, M.J.M. Bonten
*University Medical Center Utrecht, Utrecht University, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2021) 109, 32-39
背景
オランダの病院では現在、入院時に多剤耐性菌(MDRO)保菌者をスクリーニングするためのリスク評価において、6 項目の質問が義務付けられている。1 つ以上のリスク因子が存在すれば、予防的隔離と微生物培養を実施する。
目的
入院時の MDRO 保菌者スクリーニングのための普遍的リスク評価による検出率を評価すること。
方法
2015 年 1 月 1日から 2019 年 8 月 1 日にオランダの 3 次病院において、ルーチンの医療データを用いて横断研究を実施した。入院時の MDRO リスク評価には次の項目を含めた。既知の MDRO 保菌、アウトブレイク期間におけるオランダの他の病院または外国の病院への入院歴、避難所での生活、畜産経営による職業上の曝露、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)保菌者の家族である。
結果
全体で、入院 144,051 件(新規患者 84,485 例)を対象とし、入院 4,480 件(3.1%)が MDRO リスク評価陽性であった。微生物学的スクリーニングが入院 1,516 件(34%)で実施され、そのうち 341 件(23%)で MDRO が検出された。MDRO リスク評価でスクリーニングされた患者のうち 81 例が新規 MDRO 保菌者に分類され、これは全入院の 0.06%(95%信頼区間[CI]0.04 ~ 0.07)、リスク評価陽性であった入院の1.8%(95%CI 1.4 ~ 2.2)を占めた。結果として、入院時に新規MDRO 保菌者 1 例を検出するために、“実施する必要がある MDRO リスク評価”および“質問する必要がある MDRO質問票”の件数は、それぞれ 1,778 件、10,420 件であった。
結論
入院時の MDRO リスク評価という現行の対策での検出率は限られており、十分に再考する必要がある。
監訳者コメント:
リスク評価の感度・特異度と検査費用や漏れによる病院にとっての耐性菌アウトブレイクのリスクなどが常に天秤に載せられることになる。
以下の 6 項目が入院時の質問項目である。この内容は国により異なることになる。
1.MDRO(MRSA、VRE、MDR-GNRなど)の既知の保菌者ですか?
2.過去 2 か月の間に、既知のMDROの発生時に、別のオランダの病院に入院しましたか?
3.過去 2 か月間に、外国の病院に入院しましたか?
4.過去 2 か月間、あなたは亡命者のシェルターに住んでいましたか?
5.生きている豚、子牛、またはブロイラーを扱っていますか?
6.あなたは MRSA 保菌者の世帯員ですか?
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