成人の病院感染肺炎における肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の同定★

2021.02.28

Identification of Streptococcus pneumoniae in hospital-acquired pneumonia in adults

J.A. Suaya*, M.A. Fletcher, L. Georgalis, A.G. Arguedas, J.M. McLaughlin, G. Ferreira , C. Theilacker, B.D. Gessner, T. Verstraeten
*Pfizer Inc., USA

Journal of Hospital Infection (2021) 108, 146-157

病院感染肺炎は、市中感染肺炎よりも深刻で生命を脅かすことが多い。肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が市中感染肺炎に及ぼす影響は十分に理解されているが、病院感染肺炎への影響は不明である。本研究の目的は、病院感染肺炎エピソードにおける肺炎球菌の有病率に関して得た文献の概要を示すことである。18 歳以上の患者の病院感染肺炎の微生物学的特性に関して、2008 年から 2018 年に発表された査読論文を MEDLINE で検索した。病院感染肺炎エピソードでの肺炎球菌の有病率の統合推定値を、逆分散重み付けを行ったランダム効果メタアナリシスにより算出した。1,908 報のうち 47 報が選択基準を満たした。微生物学的に確定した病院感染肺炎エピソードの細菌検体の回収法には、気管支肺胞洗浄、検体保護ブラシ、気管内吸引痰、および血液培養が含まれた。すべての研究で培養が実施され、5 報では尿中抗原検出法も使用された(47 報中 5 報、10.6%)。微生物学的に確定した病院感染肺炎エピソードの 5.1%(95%信頼区間[CI]3.8 ~ 6.6%)で肺炎球菌が同定され(20 報)、人工呼吸器に関連する病院感染肺炎では 5.4%(95%CI 4.3 ~ 6.7%、29 報)、人工呼吸器に関連しない病院感染肺炎では 6.0%(95%CI 4.1 ~ 8.8%、6 報)で同定された。また、肺炎球菌は、集中治療室(ICU)で発生した病院感染肺炎の 5.3%(95%CI 4.5 ~ 6.3%、41報)、ICU 以外での病院感染肺炎の 5.6%(95%CI 3.3 ~ 9.5%、5 報)で同定された。肺炎球菌が同定される割合は、早発性の病院感染肺炎(10.3%[95%CI 8.3 ~ 12.8%]、16 報)の方が、遅発性の病院感染肺炎(3.3%[95%CI 2.5 ~ 4.4%]、16 報)よりも高かった。結論として、微生物学的に確定した病院感染肺炎エピソードの 5.1%で、培養により肺炎球菌が同定された。肺炎球菌によって生じる疾病負荷の一部として病院感染肺炎の重要性についてさらに研究する価値がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
基本的に肺炎球菌は院内伝播より市中伝播・獲得による病原体である。鼻腔内に一定期間保菌していることもあり、ハイリスク患者においては保菌状況調査なども入院後の肺炎の原因探索、予防にも貢献するかもしれない。

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