長期療養施設において繰り返されるアウトブレイク中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のクローンの交代★★
Clonal replacement of meticillin-resistant Staphylococcus aureus during repeated outbreaks in a long-term care facility
- Cohen*, M. Afraimov, T. Finn, F. Babushkin, K. Geller, H. Alexander, S. Paikin
*Sanz Medical Center, Laniado Hospital, Israel
Journal of Hospital Infection (2021) 107, 23-27
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は長期療養施設(LTCF)の居住者においてよく見られる。大部分が血流感染症(BSI)分離株である 22 株の spa 型の解析によって、2012 年から 2019 年の間に我々の地域の LTCF の 1 病棟で発生した時間的に別々の 5 つのクローンのアウトブレイクが明らかになった。各クローンは他のクローンに置き換わるまで、BSI エピソードを数か月間引き起こした。2019 年のアウトブレイクの調査中に、この病棟の医療従事者において 32%という高い MRSA の保菌率が記録された。MRSA のクローンの交代および伝播における医療従事者の役割を考察する。
監訳者コメント:
長期療養型施設で MRSA 血流感染増加し、血液から分離された MRSA の spa 遺伝子のクローン解析により、クローンが入れ替わっていることが判明した。通常長期療養型施設では入所者は変わることは少なく、クローンの変化は入所者の急性期病院入院や市中クローンの新規入所者または職員の持ち込みによると考えられる。本事例では、新規入所者は MRSA のスクリーニングが実施されており、職員による持ち込みの可能性は否定できない。一時期職員の保菌率が 30%を越えることがあったことは、職員を介した入所者への交差感染が発生し、この感染拡大の一因となった可能性がある。MRSA クローンの分析には POT 法が日本では広く使用され、クローンの変化を確認することができるため、日本においても長期療養型施設でのMRSA クローンの経年的な変化があるのかは興味のあるところである。
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