新生児特別治療室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌の持続性再発性クラスター:マッチングによる症例対照研究

2020.12.31

A persistent recurring cluster of meticillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) colonizations in a special care baby unit: a matched case-control study
N.K. Love*, B. Pichon, S. Padfield, G.J. Hughes
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 774-781


背景
2016 年 8 月から 2019 年 11 月の間に北イングランドの新生児特別治療室 1 室において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を保菌している新生児のクラスター 1 件が報告された。
目的
感染源を特定しさらなる症例を防ぐため、症例対照研究を実施した。
方法
症例は MRSA(spa 型 t316)の保菌者または感染者である入院中の新生児であった。1 症例あたり対照例 2 例をマッチさせた後向き症例対照研究を実施した。曝露は診療記録のレビューにより判定した。条件付きロジスティック回帰を用いて症例を対照例と比較した。環境調査とスタッフのスクリーニングを行った。
結果
3 年間にわたって 31 例の保菌症例が特定され、感染の報告はなかった。31 症例のうち 13 例はシークエンシングを受け 25 一塩基多型のクラスターに含まれており、一貫して長期にわたり共通の感染源に曝露されていた。大部分の MRSA 症例は以前にスクリーニング陰性の判定を受けていた(N = 22[71%])。環境サンプリングとスタッフのスクリーニングを数回実施した。分析的研究では、31 症例を対照例 62 例と比較した。多変量解析において、病棟の 1 カ所と医療従事者 1 名が有意な曝露として特定された。
結論
保菌の散発的な性質によって、MRSA はおそらく保菌している医療従事者によって断続的に導入されており、各々の一時的なクラスター内で乳児間に起こりうる伝播も発生していたという仮説が考えられた。一時的に保菌している医療従事者はアウトブレイク中の MRSA の感染源の 1 つとみなすことが推奨される。本研究は MRSA の持続的なアウトブレイクにおける分析的疫学研究の重要性を浮き彫りにしている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
NICU の MRSA の持続的伝播の原因は様々なものが報告されている。本研究では医療従事者の保菌が一因と考えられた。MRSA が中長期的に検出されている場合は医療従事者の保菌検査を検討することも一つであろう。

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