クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症の再発または非再発後における合併症および死亡のリスク:イングランドにおける後向き観察データベース研究★★
Risk of complications and mortality following recurrent and non-recurrent Clostridioides difficile infection: a retrospective observational database study in England
D.A. Enoch*, T. Murray-Thomas, N. Adomakoh, D. Dedman, A. Georgopali, N.A. Francis, A. Karas
*Addenbrooke’s Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 793-803
背景
クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile 、以下CD)感染症(CDI)は、合併症および死亡のリスクを高める。筆者らは、イングランドの初発または再発 CDI 患者の大規模コホートを対象に、これらの転帰の発生頻度を評価した。
目的
18 歳以上の病院関連 CDI および再発 CDI の入院患者を対象に、12 か月以内の合併症および全死因死亡のリスクを比較すること。
方法
2002 年から 2013 年の期間について、プライマリケアおよび死亡のデータとリンク付けされた病院入院データを用いて、病院関連 CDI 患者を特定した。各病院関連 CDI 症例を、年齢群、性別、入院時の暦年、入院方法(救急か非救急)および病院ケアエピソードの件数について、CDI のない入院患者 2 例と頻度でマッチさせた。13 日目から 56 日目に発症した 2回目の CDI エピソードを、再発と定義した。12 か月目の死亡および合併症のリスクについて、Cox 比例ハザードモデルを用いて解析した。
結果
病院関連 CDI 患者 6,862 例および CDI のない患者 13,724 例を組み入れた。年齢中央値は 81.0 歳(四分位範囲[IQR]71.0 ~ 87.0)であった。病院関連 CDI 患者ではCDI のない患者と比べて、入院から 12 か月以内に合併症が多くみられ、死亡(補正ハザード比[aHR]1.77、95%信頼区間[CI]1.67 ~ 1.87)および合併症(aHR 1.66、95%CI 1.46 ~ 1.88)のリスクが有意に高かった。病院関連 CDI 患者のうち、1,140 例(16.6%)が CDI を再発した。再発患者では非再発患者と比べて、初発 CDI から 12 か月以内における死亡(aHR 1.32、95%CI 1.20 ~ 1.45)および合併症(aHR 1.37、95%CI 1.01 ~ 1.84)のリスクも有意に高かった。
結論
病院関連 CDI(非 CDI と比べて)および再発 CDI は、いずれも初発 CDI エピソードから 12 か月以内の合併症または死亡のリスクが有意に高かった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
CD はグラム陽性桿菌で芽胞形成し、CD 毒素産生により、重症の下痢を引き起こす病院感染の代表的菌種であり、罹患後の死亡率も有意に高くなることが報告されている。しかしながらこれらの死亡率の報告は、限られた数の母集団、院内死亡や退院後死亡のどちらかのみ、あるいは専門施設での研究など偏りがあり、イングランド全体での病院関連 CDI による死亡率や合併症に関するデータは限られている。本論文では、死亡率および合併症について再発 CDI と非再発 CDIを分けて、非 CDI 患者と比較検討したものである。合併症は、潰瘍性大腸炎、中毒性結腸、小腸穿孔、中毒性胃腸炎、大腸切除術、腎不全および敗血症である。危険因子としては、他の報告と同様に PPI や抗菌薬の投与歴、過去の入院歴、集中治療歴などであった。これらの結果からは、CDI 患者の予後が非 CDI 患者よりも悪いことから、予防と疾患管理の重要性を再認識する形となった。
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