病院感染肺炎および人工呼吸器関連肺炎の治療・管理について検討し評価する医療経済モデルのレビュー

2020.12.31

Review of health economic models exploring and evaluating treatment and management of hospital acquired pneumonia and ventilator-associated pneumonia
A.P. Wagner*, V.I. Enne, D.M. Livermore, J.V. Craig, D.A. Turner, INHALE Study Group
*University of East Anglia, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 745-756


背景
病院感染肺炎(HAP)は入院から 48 時間以降に発生する肺炎で、死亡の一因となる院内感染症としてもっとも頻度が高い。人工呼吸器関連肺炎(VAP)は挿管から 48時間から 72 時間以降に発生する。VAP が HAP の一部であるか否かについて見解は異なるが、両方とも同じ病原体が優勢を占めている。VAP を発症していない対照と比較して、VAP 発症患者は死亡率が 2 倍であり、集中治療室への入室期間が有意に長い。ガイドラインでは、微生物培養を抗菌薬治療の指針とすることが推奨されているが、感度が不十分であり、培養のプロセスに 48 時間から 72 時間を要する。これは、初回治療が一般的に広域スペクトル抗菌薬による経験的治療になることを意味している。抗菌薬適正使用支援と患者のアウトカムの両方の改善が迫られている状況を踏まえて、英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence)および米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America)は、原因菌とその抗菌薬耐性を特定するための迅速な分子診断検査法の研究を推奨している。理想的には、これらが培養に取って代わり、より迅速で感度の高い検査法となるであろう。英国では、国立医療研究機構(National Institute for Health Research)により資金援助を受けた INHALE 研究プログラムにより、HAP/VAP の治療への情報提供を目的とした迅速分子診断について研究が進行しており、資源の意義を考慮して、医療経済的な要素を組み入れている。
目的
医療経済的な要素について情報を提供するために、HAP/VAP の費用に関する以前の経済モデルを特定すること。
方法
3 つのデータベースにより特定した経済モデルを含む HAP/VAP の研究に関する文献のレビュー。
結果
20 報の研究を特定した。診断の改善を図るための対策を具体的に評価した研究は 1 報のみで、残りの 19 報はこの重要な側面を評価していなかった。
結論
長期アウトカムおよび治療の複雑さへの意識の高まりにより、HAP/VAP の経済モデルは改善されるであろう。著者の知る限り、HAP/VAP の経済モデルに関して同様の文献レビューは発表されていない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
医療経済的に医療関連感染が発生すると、如何に損失が大きいかについての研究がすすんでいる。具体的に医療関連感染の種別毎にそのリスク評価がなされることで、インセンティブが働き、改善プログラムが組みやすくなるだろう。

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