医療関連新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症率と転帰:診断遅延の意味とスタッフの病欠との相関

2020.12.31

Incidence and outcomes of healthcare-associated COVID-19 infections: significance of delayed diagnosis and correlation with staff absence
K. Khonyongwa*, S.K. Taori, A. Soares, N. Desai, M. Sudhanva, W. Bernal, S. Schelenz, L.A. Curran
*Kings College Hospital NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 663-672


背景
2020 年の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)パンデミック中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院の急増は、脆弱な入院患者における前方感染の原因となった。
目的
本研究は、2020 年の流行時における医療関連 COVID-19(HA-COVID-19)の有病率と臨床転帰を評価するため、ならびに英国・ロンドンの国民保健サービス(NHS)トラストの教育病院 1 施設における発症率および伝播を促進するまたは発症率および伝播と相関する可能性がある因子を検討するため実施した。
方法
電子的な検査室の記録、患者とスタッフの自己報告による疾患記録を 2020 年 3 月 1 日から 4 月 18 日まで検索してデータを得た。HA-COVID-19 は入院 14 日目を超えて発症した COVID-19 として定義した。患者配置を目的とする単回の鼻咽頭スワブの検査性能を測定した。HA-COVID-19 に関して、遅延型の RNA 陽性(48 時間を超える遅延として定義)、スタッフが自己報告した COVID-19 による病欠、病床利用率、および COVID-19 の市中発症率の影響を比較した。他の重要な病院感染細菌感染症の発症率を過去数年と比較した。
結果
58 例(7.1%)の HA-COVID-19 症例が特定された。市中感染入院症例(CA-COVID-19)と比較すると、年齢(P = 0.018)、民族性(P <0.001)および併存疾患の負荷(P <0.001)において有意差が認められたが、30 日死亡率では有意差は認められなかった。鼻咽頭スワブの陰性的中率は 60.3%であった。遅延型の RNA 陽性は高い死亡率(P = 0.034)と関連しており、HA-COVID-19 の発症率は遅延型の RNA 陽性(R = 0.7108)およびスタッフの病欠(R = 0.7815)と正の相関を示した。試験期間の病院感染細菌感染症の発症率は過去 2 年と同程度であった。
結論
COVID-19 患者の早期診断と隔離は伝播の減少に役立つ可能性がある。単回の鼻咽頭スワブは、患者を陽性者および陰性者に分類する際に限られた価値しかもたない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
検査のタイミング、種類の異なる検査との組み合わせについて、多くの論文が検討をしているが、なかなか決めてになる方法が出てこないのが現状と思われる。市中での感染率も影響を与える因子の一つと思われる。

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