術後感染症と乳癌再発との関係

2020.11.30

The relationship between post-surgery infection and breast cancer recurrence
R.í. O’Connor*, P.A. Kiely, C.P. Dunne
*University of Limerick, Ireland
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 522-535


乳癌は世界的に女性において 2 番目によく見られるがんであり、依然として手術が標準的治療法のままである。手術の悪影響についてはいまだ議論の余地がある。術後期の全身性要因、特に手術部位感染症(SSI)が再発リスクを上昇させる可能性が示唆されてきた。本レビューの目的は、初回の乳癌手術後の SSI が乳癌再発に及ぼす影響に関する現在の公表文献を批判的に評価すること、ならびにこれらが関係している可能性について掘り下げて調査することであった。本システマティックレビューでは、初回の乳癌手術後の SSI の発生率と SSI に関連するリスク因子を明らかにすること、次に SSI 発生後の乳癌再発を調査することという 2 つのアプローチを採用した。SSI に焦点を絞った検索では患者 484,605 例の 99 件の研究が適格であり、再発に焦点を絞った検索では患者 17,569 例の 53 件の研究が適格であった。SSI の発生率の平均は 13.07%であった。638 のグラム陽性分離株と 442 のグラム陰性分離株が同定され、最も高頻度に同定されたのはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus)と大腸菌(Escherichia coli)であった。再発症例は 2,077 例(11.8%)であり、局所再発は 563 例、遠隔再発は 1,186 例、局所と遠隔の両方で再発した症例は 25 例であった。5 件の研究が SSI と乳癌再発との関連性を検討し、3 件が関連性があると結論づけた。結論として SSI とがんの有害転帰の間には関連性があるが、それらの間の細胞レベルの関係は依然として分かりにくいままである。後向きの研究デザインの交絡因子、手術の種類および SSI の定義が結果を比較・解釈しづらくしている。適切な検出力のある標準化された前向き研究が正当である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本論文には非常に長いイントロダクションが付いている。癌手術における術後感染症が、癌の再発につながるという理論的根拠が書かれている。SSI が癌の再発につながるという議論は今回初めて知ったので、大変興味深い内容であったが、それを支持するデータはまだ少ないようである。

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