クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症による医療サービスへの費用負担:スコットランドにおける後向きコホート研究★★

2020.11.30

Cost burden of Clostridioides difficile infection to the health service: A retrospective cohort study in Scotland
C. Robertson*, J. Pana, K. Kavanagh, I. Ford, C. McCowan, M. Bennie, C. Marwick, A. Leanord
*University of Strathclyde, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 554-561


背景
クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)は、医療需要を高め関連費用を増大させる。
目的
スコットランドの国民保健サービス(NHS)において、市中関連 CDI または病院関連 CDI を有する入院患者の医療負担および経済的負担を評価すること。
方法
後向きコホート研究を実施し、2010 年 8 月から 2013 年 7 月のスコットランドにおける患者レベルの、死亡データとリンク付けされた4 つのデータセットのデータを検討した。検討したデータは、市中における過去の抗菌薬処方、入院、入院期間および死亡などであった。各 CDI 症例は、年齢、性別、病院および入院日に基づいて、病院ごとに対照 3 例とマッチされた。記述的な経済的評価は、異なる病棟ごとの病床日あたりの費用に基づいて行った。
結果
全体で、CDI 症例 3,304 例を本研究に組み入れた。CDI は、入院期間中央値について、それぞれのマッチされた対照者と比較して、市中関連 CDI 入院患者では 7.2 日、病院関連 CDI 入院患者では 12.0日の増加と関連した。30 日死亡率は、市中関連 CDI 入院患者では 6.8%、病院関連 CDI 入院患者では 12.4%であった。全体で、初回 CDI エピソードから 90 日以内の再発は、生存者 2,740 例中 373 例(13.6%)であった。各初回 CDI 症例における費用中央値は、マッチされた対照者と比較して1,713 ポンド増加した。CDI による初回入院後 6 か月以内では、CDI 症例に関連した費用は対照者と比較して 5,126 ポンド高かった。
結論
ルーチンで収集される全国データを用いて、著者らは CDI が医療サービスに大きな負担をもたらしていることを示した。こうした負担には、長期の入院期間および再入院が含まれ、これにより、CDI 患者の管理費用にはマッチされた対照者と比較して増大が認められた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
日本では市中関連 CDI はまだ大きな問題にはなっていないが、北米および EU 地域では市中関連 CDI も重要である。本論文では、入院 2 日以内に採取した便で CDI と診断されたものを「市中関連(病院発症)CDI」とし、入院 3 日目からの採取した便では「病院関連(病院発症)CDI」と定義しているが、これは ECDC (欧州CDC)の定義(退院後 4 週間以内の発症は病院関連としているため、市中関連が多めになる可能性あり)とは異なるため、比較の場合に注意が必要である。いずれにしても CDI は医療コストの増加を導くことに間違いはなく、医療サービスへの大きな負担となる。

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