抗菌薬耐性腸内細菌目細菌(基質特異性拡張型β – ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌[Extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacterales;ESBLPE]およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌[carbapenemase-producing Enterobacterales;CPE])によるトイレの汚染:実験的研究
Bathroom contamination by antibiotic-resistant Enterobacterales (ESBLPE and CPE): an experimental study
T. Sevin*, V. Goldstein, I. Lolom, F. Lenne, Y. Gaudonnet, A.L. Baptiste, G. Bendjelloul, L. Armand-Lefevre, J.C. Lucet
*Bichat-Claude Bernard Teaching Hospital, Assistance Publique-Hôpitaux de Paris, France
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 271-276
背景
基質特異性拡張型β – ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌(Extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacterales;ESBLPE)とカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales ;CPE)は重篤な感染症の原因となる。それらの尿中での存在は交差伝播の原因となり得る環境汚染を引き起こす可能性がある。
目的
医療現場での一般的な慣行のように、尿をトイレに捨ててシンクですすいだ後の、しぶきと汚染の程度を評価すること。
方法
各試験で手順は同様であり、便座を上げて尿瓶の中身を便器の高さでトイレに捨て、シンクですすいで流した。飛び散る液滴を調査するため、水とフルオレセインを尿瓶内で混ぜた。それぞれの場所で飛び散る液滴の頻度と程度を紫外線(UV)によって評価した。汚染を調査するため、3 つの ESBLPE と 1 つの CPE を生理食塩水で希釈して 106/mL にした。試験前、試験直後、試験の 3 時間後にサンプル採取によって汚染を評価した。スワブを培養し、コロニーの計測と同定を行った。
結果
しぶきのリスクが最も高い場所は便器の外側(N = 36/36)、便座の裏面(N = 34)、ならびにシンクの内側(N = 34)であった。手袋(N = 14)を除いて衣類の汚染は少なかった。汚染の頻度が最も高い場所はシンクの内側(40/48)であり、汚染の程度が最も高いことが確認された(14/48)。
結論
尿瓶の中身をトイレに捨てた後にシンクですすぐことは飛散と汚染の著しいリスクに関連しており、場所によるものの(シンクでのリスクが最も高い)、細菌は 3 時間を超えて生存することはなかった。この慣行には交差伝播のリスクがあり、見直されるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
尿ビンに入った尿を捨てる際の環境の汚染に関する論文である。耐性菌に限らず、便器の外側、便座の裏側、シンクの内側が汚染されていることを考えると、廃棄方法そのものを検討する必要があると思われた。
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