成人がん患者におけるカテーテル関連血流感染症:前向き無作為化対照試験★

2020.10.30

Catheter-associated bloodstream infections in adults with cancer: a prospective randomized controlled trial
P. Mollee*, S. Okano, E. Abro, D. Looke, G. Kennedy, J. Harper, J. Clouston, R. Van Kuilenburg, A. Geary, W. Joubert, M. Eastgate, M. Jones
*School of Medicine, University of Queensland, Australia
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 335-342


背景
中心静脈アクセスデバイスで多くみられる合併症は、カテーテル関連血流感染症(CABSI)である。著者らは以前に、右側への中心静脈アクセスデバイスの挿入は、CABSI のリスク上昇と関連することを示したことがあり、この所見はこの患者集団において右利きが多かったことに関連し、その結果として腕の動きが大きく、細菌汚染が多くなったという仮説を立てた。
目的
前向き無作為化対照非盲検研究を実施し、中心静脈アクセスデバイスの挿入側が CABSI の発生率に影響を及ぼすかどうかを明らかにすること。
方法
成人がん患者を、中心静脈アクセスデバイスの挿入側について利き手側または非利き手側に無作為に割り付けた。本研究の主要アウトカムは、CABSI 発症までのライン日数とし、2 名の評価者が盲検下で算定した。
結果
全体で、中心静脈アクセスデバイス 640 個を、挿入について利き手側(N = 322)または非利き手側(N = 318)に無作為化し、60%は血液悪性腫瘍、40%は固形癌を有していた。中心静脈アクセスデバイスは、末梢挿入中心カテーテルライン(67%)、トンネル型中心静脈アクセスデバイス(23%)、および非トンネル型中心静脈アクセスデバイス(10%)であった。中心静脈アクセスデバイスの 22%では、合併症として CABSI が発生した。CABSI 発生率は、非利き手群と利き手群において、それぞれ1,000 ライン日あたり 3.49 および 3.66 であった(ハザード比[HR]0.91、95%信頼区間[CI]0.65 ~ 1.28)。多変量解析により、CABSI 発生率は、トンネル型中心静脈アクセスデバイスの使用(HR 2.05、95%CI 1.45 ~ 2.91)のほうが末梢挿入中心静脈カテーテルラインの使用よりも、血液悪性腫瘍を有しているほうが(HR 5.55、2.47 ~ 12.5)消化器以外の固形癌を有しているよりも高かったが、中心静脈アクセスデバイスの挿入側について利き手側のほうが非利き手側より高いわけではなかった(HR 0.97、0.69 ~ 1.36)。
結論
成人がん患者における CABSI には、中心静脈アクセスデバイスの挿入側が利き手側であるか非利き手側であるかによる影響は認められなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CABSI発生のリスク因子として「利き手」の違いによる差を検討した研究であるが、結果として差は認められなかった。担癌患者におけるCABSIの発生率としては、既報では 1,000ライン日あたり2.5前後であり、本報告では3.5前後で高めである。しかしながら、患者対象が血液疾患となると 4.0 ~ 6.0 と高くなり、特に集中的に化学療法を実施する血液疾患患者においては発生率は本論文でも 5.55 と他の血液疾患や癌患者に比較して有意に高くなる。理由は、集中的な化学療法により免疫抑制や好中球減少により易感染性となり、さらにラインへのアクセス回数が増えるために、高率になることが考えられる。しかしながら、アクセス回数が増えても「無菌的操作の遵守」は必須であり、徹底することで発生率をさらに低減させることが期待される。

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