スペイン、マドリードの病院 1 施設の医療従事者における SARS-CoV-2 感染症★★
SARS-CoV-2 infection among healthcare workers in a hospital in Madrid, Spain
I. Suárez-García*, M.J. Martínez de Aramayona López, A. Sáez Vicente, P. Lobo Abascal
*Hospital Universitario Infanta Sofía, Spain
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 357-363
背景
医療従事者は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)による感染症に特に罹りやすい。
目的
本研究の目的は、2020 年 2 月 24 日から 4 月 30 日にかけて、スペイン、マドリードの病院 1 施設の医療従事者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疫学的および臨床的特徴を記述することであった。
方法
本研究は、後向きコホート研究であった。COVID-19 の累積発生率を、すべての医療従事者について、ならびに COVID-19 への推定曝露レベル(高、中、低)により分類した医療従事者について算出した。
結果
医療従事者1,911 名中 213 名(11.1%)が研究期間中に COVID-19 を発症した。症例数は 3 月 8 日から徐々に増加し、3 月 17 日にピークに達し、その後減少した。医療従事者における症例数は 14 日にピークに達し、これは、入院患者における症例数がピークに達する前であった。職業的曝露レベル別の COVID- 19 症例の割合には有意差はなかった(P = 0.123)。医療従事者の 20%超で COVID-19 が確認されたのは、5 部門および 2 専門領域であった。これら 5 部門中 3 部門および 2 専門領域中 1 専門領域で一時的なクラスターが認められ、大部分の症例は 5 日未満の期間にわたって発生していた。併存症の有病率は低く、患者の 91.5%は軽症または中等症であった。患者 11 例が入院し、1 例が集中治療を必要とした。死亡した患者はいなかった。病気休暇取得の日数中央値は、20(四分位範囲15 ~ 26)日であった。
結論
これらの結果から、一部の症例は医療従事者間伝播によるものであったことが示唆される。併存症の有病率が低く、またほとんどの症例で経過が軽症であったにもかかわらず、COVID-19 は長期の病気休暇取得の原因となった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
スペインのマドリッド市内の 1 病院における COVID-19 の罹患状況の報告である。急激な市中での患者増加は、外来における患者の混雑、不十分なトリアージと待合室の不足、さらに環境汚染と PPE 着用が不十分となり、PPE 不足がさらに拍車をかけ、医療スタッフの感染増加、そして適切に感染対策ができる医療スタッフの枯渇につながり、ひいては医療崩壊への連鎖につながる。3 月頃の医療スタッフの感染率はスペインやイタリアでは20~ 30%と高率である。本病院の復帰基準が「症状軽快後 2 日目、5 日目にPCR 検査を実施し、その後は陰性確認まで実施する」こととなってるが、実際は 5 ~ 7日目でほとんどの職員が陰性となり職場復帰している。PCR 陽性イコール感染性ありではなく、PCR 陽性であっても発症後 7 ~ 10 日程度で感染力はなくなることがわかっており、軽症であれば発症後 10 日程度で復帰できる。
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