十二指腸内視鏡再処理の不適切性予測のためのポイント・オブ・ケア検査としてのトリプル・アデニル酸ヌクレオチド検査とアデノシン三リン酸検査の性能特性および至適カットオフ値の比較★
Performance characteristics and optimal cut-off value of triple adenylate nucleotides test versus adenosine triphosphate test as point-of-care testing for predicting inadequacy of duodenoscope reprocessing
W. Ridtitid*, P. Pakvisal, T. Chatsuwan, S.J. Kerr, P. Piyachaturawat, T. Luangsukrerk, P. Kongkam, R. Rerknimitr
*Chulalongkorn University and King Chulalongkorn Memorial Hospital, Thailand
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 348-356
背景
ヌクレオチドに基づくアデノシン三リン酸検査は、医療業界および食品業界において細菌汚染に対するポイント・オブ・ケア検査(POCT)として用いられてきた。仮説として、3 種類の(トリプル)アデニル酸ヌクレオチドに対する検査はアデノシン三リン酸検査よりも、十二指腸内視鏡の細菌汚染について検出能が高い可能性がある。
目的
十二指腸内視鏡の細菌汚染予測におけるトリプル・アデニル酸ヌクレオチド検査とアデノシン三リン酸検査の性能特性および至適カットオフ値を評価すること。
方法
内視鏡的逆行性胆道膵管造影 100 件から得た十二指腸内視鏡サンプル 400 個を、A 群(トリプル・アデニル酸ヌクレオチド検査)または B 群(アデノシン三リン酸検査)に無作為化した。サンプルは、十二指腸内視鏡に対する洗浄処理の 4 段階においてのエレベーターチャネル(鉗子チャンネル)で採取した。本研究で得られた受診者動作特性(ROC)を用いて、陰性的中率(NPV)が 100%に達するための検査の新たなカットオフ値を確定した。
結果
洗浄処理の 4 段階から得た培養結果を参照基準として用いると、ROC 曲線下面積(AUROC)は A 群(N = 200)および B 群(N = 200)について、それぞれ 0.83 および 0.84 であった。高レベル消毒後の培養結果を参照標準として用いると、AUROC はA 群(N = 50)および B 群(N = 50)について、それぞれ 0.35 および 0.74 であった。著者らは、高レベル消毒後の POCT としてのアデノシン三リン酸について検討し、新たなカットオフ値を 40 RLU と確定した。しかし、このカットオフ値では細菌数が少ない場合に検出できなかった。
結論
トリプル・アデニル酸ヌクレオチド検査とアデノシン三リン酸検査は、十二指腸内視鏡に対する 4 段階の洗浄処理時の細菌汚染検出における予測能が良好であった。アデノシン三リン酸 < 40 RLU は、高レベル消毒後の POCT として有用である。ただし、このカットオフ値の限界は、細菌数が少ない場合に検出できないことである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
十二指腸内視鏡は複雑な構造のために洗浄が困難な部分があり、その結果洗浄消毒が不十分となり、内視鏡を介した耐性菌によるアウトブレイクが多数報告されている。高水準洗浄消毒の効果を評価する方法として、米国 CDC は操作チャンネルとエレベーター部分からの培養を推奨しているが、培養に最低 3日間を要するため、実際的とは言い難い。その代替法として ATP 測定があるが、その有用性については見解が分かれている。一方で洗浄後の連続的 ATP 測定は洗浄効果と用手洗浄要員の技能評価に有効とされている。一般的な環境清掃の評価としての ATP のカットオフ値(200 RLU)は定められているが、内視鏡の用手洗浄後と高水準消毒後の評価にはより低いカットオフ値の設定が必要であり、本論文では40 RLUをカットオフ値に設定している。また、ATP以外のAMPやADPもまとめて測定できる測定系(A3)を同時に導入することでより感度を上げることができ、この論文ではキッコーマン社製の ATP/T3の測定器を使用している。
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