クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)リボタイプ 027 のアウトブレイクの効率的な介入バンドルによる管理の成功

2020.10.30

Successful management of a Clostridioides difficile ribotype 027 outbreak with a lean intervention bundle
A.B. Kuenzli*, S. Burri, C. Casanova, R. Sommerstein, N. Buetti, H.M.B. Seth-Smith, T. Bodmer, A. Egli, J. Marschall
*Bern University Hospital, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 240-245


背景
2015 年の点有病率研究では、高病原性のリボタイプの 1 つであるクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)027 はスイスの医療施設に存在していなかった。我々は 2016 年後半に、同じ病院ネットワークの複数の病院にわたってリボタイプ 027 を有する C. difficile の感染症(CDI)のアウトブレイク 1 件が発生したことを検知した。
方法
リボタイプ 027 に起因する CDI の最初の症例が、アウトブレイク株を同定するための全ゲノムシークエンス法(WGS)を含むアウトブレイク調査のきっかけとなった。
結果
2016 年 12 月から 2017 年 12 月の間にリボタイプ 027 に起因する CDI 患者 28 例が特定され、そのうち 20 例は単一クローンに起因していた。これらの患者の共通点は、同じ病室または同じ病棟での入院、同じ医療従事者のケアを受けたこと、ならびにトイレの共有であった。症例間の可能性のある伝播経路を示唆する疫学的関連性に加えて、WGS により C. difficile 027 の本アウトブレイクのクローン性が裏付けられた。本アウトブレイクは隔離予防策、医療従事者の意識向上、診断アルゴリズムの統一、環境消毒用の殺芽胞剤への切り替えによって食い止められた。注目すべきことに、標準のガウンと手袋の着用も水と石けんによる手洗いも実行されなかった。
結論
C. difficile 027 による本アウトブレイクは、一部の病院でリボタイプのスクリーニングが不十分であったために遅れて認知され、簡便な感染予防策と検査室でのアプローチの適合を伴う迅速な対応によって食い止められた。C. difficile の疫学の理解を深めるために、診断アプローチを標準化し、CDI の届出義務を発表し、蔓延しているリボタイプに関する縦断的データが確立されていない国においてデータ収集をすべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
スイスの病院グループで発生した C.difficile アウトブレイク調査の結果、医療従事者は一番の感染伝播の原因であった。対策は、PPE や手洗いの強化ではなく、個室、トイレの個別使用、殺芽胞剤(ペルオキシ硫酸カリウム)を用いた環境清掃であった。

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