入院患者におけるペニシリンアレルギーの点有病率★

2020.09.30

Point prevalence of penicillin allergy in hospital inpatients
M. Baxter*, C. Bethune, R. Powell, M. Morgan
*Royal Devon and Exeter NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 65-70


一般集団の 10%は、自分がβ-ラクタム系薬に対するアレルギーを有していると、信じているが、多くは誤っている。代替の広域スペクトルの抗菌薬は、薬剤費および耐性菌保菌の増加と関連している。入院患者を対象とした点有病率研究により、その施設で報告されたペニシリンアレルギーの有病率、報告されたアレルギーの性質、抗菌薬耐性の所見、およびその結果用いられた抗菌薬レジメンを明らかにした。評価した患者 583 例中、ペニシリンアレルギーの全有病率は 13.7%(95%信頼区間[CI]11 ~ 17%)であった。最も多く報告された有害反応は発疹であった(27.5%、95%CI 18 ~ 39%)。ペニシリンアレルギーの性質の詳細は、治療薬チャートに十分な記録がなかった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)の検出率は、アレルギー集団のほうがペニシリンアレルギーに分類されなかった集団よりも有意に高かった(P = 0.0065)。この傾向は、バンコマイシン耐性腸球菌でも認められたが、有意性には達しなかった。本研究により、広域スペクトル抗菌薬の使用によると考えられるペニシリンアレルギーの患者において、耐性菌の検出率が高いことが示された。
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監訳者コメント
英国において、ペニシリンアレルギーを自己認識しているのは一般の 10%であるが、このうち本当にアレルギーなのは 10%未満である。本研究ではアレルギー集団では代替となる広域抗菌薬の使用により MRSA などの耐性菌の検出リスクが高くなることを報告している。日本は英国に比べるとペニシリン系薬の使用頻度が極めて少ないので、ペニシリンアレルギーを自認する人の割合はかなり低いと考えられるが、中途半端なアレルギー歴で、安易に広域抗菌薬を使用することを警鐘する点は参考になる。

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