一般的な医療関連感染症病原体の消毒において、送達システムが低濃度の過酸化水素の効果に及ぼす影響★
Influence of delivery system on the efficacy of low concentrations of hydrogen peroxide in the disinfection of common healthcare-associated infection pathogens
N.J. Amaeze*, M.U. Shareef, F.L. Henriquez, C.L. Williams, W.G. Mackay
*University of the West of Scotland, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 189-195
緒言
医療関連感染症病原体が環境表面上で生存する能力についてはよく知られている。こうした病原体を低減または除去するために消毒が行われるが、消毒は依然として不十分なことがある。消毒効果を改善する可能性のある 1 つの方法は、過酸化水素による全室消毒である。
目的
一般的な医療関連感染症病原体に対する低濃度の過酸化水素の効果に送達システムが及ぼす影響を明らかにすること。
方法
SanoStatic(静電スプレー)とSanoFog(噴射式)について、消毒のための5%過酸化水素および微量の銀イオンの送達能の比較を行った。検査用の細菌播種は、バンコマイシン耐性腸球細菌科細菌(vancomycin-resistant Enterobacterales;VRE)、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales;CPE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)芽胞、ならびに枯草菌(Bacillus atropheus)および中等度好熱性細菌である Geobacillus stearothermophilus の芽胞市販ストリップ(訳注:滅菌のバイオロジカル・インジケーター)を用いた。
結果
SanoFog と SanoStatic は、本研究で報告する実験環境下で検討した場合は効果的であった。VRE、ESBL 産生肺炎桿菌、CPE および MRSA については、SanoFog および SanoStatic は同程度の性能であった。C. difficile については、SanoFog は C. difficile 芽胞の消毒については SanoStatic より効果的であった、と著者らは結論付けた。
結論
SanoFog と SanoStatic は細菌細胞に対して効果的であったが、本稿で報告した実験条件下で検討した結果に基づくと、SanoFog と SanoStatic を併用するという現行の実践が C. difficile 芽胞の消毒において効果的であろう。芽胞ストリップを用いた場合、植物細胞(VRE、ESBL 産生肺炎桿菌、CPE および MRSA)あるいは C. difficile 芽胞のいずれと比較しても同程度の結果は得られなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療施設内感染の病原細菌が環境で長期生存することは良く知られており、適切な環境清掃が実施されてもしばしば残存していることが報告されている。本論文は過酸化水素の環境消毒の効果を用手法の静電スプレー式と自動噴霧式で比較したものである。噴霧式は閉鎖された病室内で噴霧するので手間がかからない半面、これらの噴霧された過酸化水素が空気の流れによりうまく室内の隅々まで環境表面に届いているのかは予測ができない。一方、静電スプレー式のものは、過酸化水素を吸入しないようマスクをしたうえで、直接環境にスプレーしてゆくものである。詳細は下記の URL を見て頂きたい。これらの装置のヒトへの安全性や消毒効果についてはさらなる検討が必要である。
(英国の Sanondaf という会社の製品:http://www.sanondaf.co.uk/disinfection-services/)
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