全ゲノムシークエンシングにより検出された optrA がコードする接合性プラスミドを保有するリネゾリド耐性およびバンコマイシン耐性 ST80 エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)による病院アウトブレイク
Hospital outbreak of linezolid-resistant and vancomycin-resistant ST80 Enterococcus faecium harbouring an optrA-encoding conjugative plasmid investigated by whole-genome sequencing
S.A. Egan*, S. Corcoran, H. McDermott, M. Fitzpatrick, A. Hoyne, O. McCormack, A. Cullen, G.I. Brennan, B. O’Connell, D.C. Coleman
*University of Dublin, Trinity College, Ireland
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 726-735
背景
リネゾリドは、多剤耐性グラム陽性細菌による感染症の治療に用いられる抗菌薬である。腸球菌におけるリネゾリド耐性の報告が増加しており、最近では optrA、poxtA、または cfr によりコードされた耐性が増加している。
目的
リネゾリドおよびバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)による病院アウトブレイクについて、全ゲノムシークエンシングを用いて検討すること。
方法
2019 年 10 月に患者スクリーニング(分離株19 株、患者 17 例)および環境箇所(分離株 20 株)で回収されたバンコマイシン耐性 E. faecium 39 株について検討した。分離株について、PCR を用いて optrA、poxtA および cfr のスクリーニングを行い、MiSeq 全ゲノムシークエンシング(Illumina)を実施した。分離株の関連性について、E. faecium コアゲノム複数部位塩基配列タイピング(cgMLST)を用いて評価した。リネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium 1 株に対して、MinION ロングリード全ゲノムシークエンシング(Oxford Nanopore Technologies)と MiSeq ショートリードシークエンシングとのハイブリッドアセンブリを実施して optrA がコードするプラスミドの解明を試みた。
結果
分離株 20 株(51.3%)がリネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium で optrA 陽性であり、これには指標患者に由来するリネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium が含まれた。密接に関連するシークエンス型(ST)80 の分離株 28 株のクラスターが cgMLST により同定され、これにはリネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium 全 20 株、ならびにリネゾリド感受性のバンコマイシン耐性 E. faecium 8 株が含まれ、アレルの相違は平均で 2(範囲 0 ~ 10)であり、このことからアウトブレイクであることが示唆された。リネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium 19 株(95%)が 56,684 bp の接合性プラスミド(pEfmO_03)を保有していた。残りのリネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium では、pEfmO_03 に対する配列包括度 44.1%が示された。リネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium における pEfmO_03 の存在と、アウトブレイクのクラスター分離株の密接な関連性から、単一株が拡散していることが示唆された。このアウトブレイクは、感染予防・制御および環境清掃策の強化、病棟への入院停止、ならびに病棟専門スタッフの配置によって終息した。
結論
全ゲノムシークエンシングは、ST80 リネゾリドおよびバンコマイシン耐性 E. faecium によるアウトブレイクの検討において、中心的な役割を果たした。感染予防・制御策の強化を速やかに実施したことで、このアウトブレイクは終息した。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
アイルランドからの報告であるが、プラスミドにリネゾリド耐性遺伝子が乗った E. faecium のアウトブレイクとのことである。恐ろしい話だ…ちなみにどのように治療されたのかについては記載がなかった。VRE アウトブレイクの対応の部分は参考になるかもしれない。
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