腹部大手術後の敗血症性急性呼吸窮迫症候群の患者における肺の微生物叢パターンは疾患の経過と相関する★
Pulmonary microbiome patterns correlate with the course of disease in patients with sepsis-induced ARDS following major abdominal surgery
F.C.F. Schmitt*, A. Lipinski, S. Hofer, F. Uhle, C. Nusshag, T. Hackert, A.H. Dalpke, M.A. Weigand, T. Brenner, S. Boutin
*Heidelberg University Hospital, Germany
Journal of Hospital Infection (2020)105, 438-446
背景
敗血症性急性呼吸窮迫症候群を有する患者は死亡率が高い。早期の標的抗菌薬療法は患者の生存のために欠かせない。病原菌同定のための次世代シーケンスによるアプローチの臨床使用は、診断能の改善をもたらす可能性がある。そこで、本研究の目的は、敗血症性急性呼吸窮迫症候群の患者において、肺の微生物叢の変化と、その結果もたらされるアウトカムへの影響を調査すること、ならびに病原菌同定のための次世代シーケンスによる診断法と培養による診断法を比較することである。
方法
本研究では 2 群に計 30 例の患者を登録した。その内訳は、腹部大手術後に敗血症性急性呼吸窮迫症候群を発症した患者 15 例、食道切除術を受けた患者 15 例(対照群)であった。急性呼吸窮迫症候群の患者群では、発症時(0 日)、5 日後、10 日後に血液サンプルを採取した。同時点に、培養による解析および次世代シーケンス解析用の気道上皮被覆液の採取ならびに肺微生物叢の経時的変化の評価のために、気管支肺胞洗浄を実施した。対照群では、気管支肺胞洗浄によるサンプルと血液サンプルをそれぞれ 1 回のみ採取した。
結果
急性呼吸窮迫症候群の患者は、対照群と比較して、α多様性が有意に低く(P = 0.007)、肺微生物叢の優位性が高かった(P = 0.012)。α多様性の指標は、集中治療室入室期間(P = 0.015)、機械的換気の必要性(P = 0.009)と相関した。急性呼吸窮迫症候群の患者の 42.9%で、培養による結果は陰性であったが、次世代シーケンスによる結果では細菌定着が認められた。
結論
敗血症性急性呼吸窮迫症候群は、患者の肺微生物叢の有意なバランス異常と関連し、このことは疾患の臨床経過と密接に相関する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
敗血症性急性呼吸窮迫症候群は、患者の肺微生物叢の有意なバランス異常と関連し、このことは疾患の臨床経過と密接に相関するということは、肺微生物叢の有意なバランス異常を検査すれば、敗血症性急性呼吸窮迫症候群の診断がし易くなる可能性がありそうだ。
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