ヒータークーラーユニットの水サンプルからのマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)の回収に対するチオ硫酸ナトリウムの効果
The effect of sodium thiosulfate on the recovery of Mycobacterium chimaera from heater-cooler unit water samples
E.E.H. Mak*, L.H. Sng, B.W.M. Lee, J.W.L. Peh, R.E. Colman, M. Seifert
*University of California, USA
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 252-257
背景
ヒータークーラーユニットは、心臓胸部外科手術後の患者における侵襲的なマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の、近年の世界的なアウトブレイクに関与してきた。感染患者は長期間無症候性のままである傾向があるため、リアルタイムでのヒータークーラーユニットからの M. chimaera の検出は、進行中の M. chimaera のヒータークーラーユニット関連のアウトブレイクを食い止めるために必須である。M. chimaera の存在を評価するためのサンプル採取手順では、採取工程中のチオ硫酸ナトリウムの添加に関して相反する勧告が行われている。
目的
M. chimaera の回収と培養汚染に対するチオ硫酸ナトリウムの効果を調査すること。
方法
ヒータークーラーユニットの水サンプル 76 対(チオ硫酸ナトリウムあり、なし)を採取・処理し、Lowenstein-Jensen 斜面培地、Middlebrook 7H10 寒天培地、mycobacteria growth indicator tube に同時に投入して、37°Cで培養した。追加で 31 対のサンプルのサブセットを mycobacterial growth indicator tubes を培地として用い、30°Cで培養した。
結果
3 つの培地のそれぞれにおいてチオ硫酸ナトリウムあり、なしで 37°Cで培養された 76 のサンプルのうち、M. chimera は 21 サンプルの 1 分割量以上で同定された。
結論
チオ硫酸ナトリウムの存在は、多変数条件付きロジスティックモデルにおいて M. chimera の回収確率を有意に上昇させることはなく、チオ硫酸ナトリウムありとなしの分割量間の培養汚染率は同程度であった。mycobacterial growth indicator tubes で 30°C と 37°Cの両方で培養されたサンプルのサブセットにおいても、チオ硫酸ナトリウムの存在はやはり M. chimera の回収に関連していなかったが、培養汚染の減少には有意に関連していた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
イギリスでは、抗酸菌の環境培養においてその回収率を上げるためにチオ硫酸ナトリウムの使用を推奨している。本研究ではチオ硫酸ナトリウムの有無による非結核性抗酸菌、なかでもM. chimeraの環境培養への影響を評価している。結果、一般細菌などのコンタミネーションを抑制する効果はあったということである。日本でも抗酸菌の環境培養を行う場合念頭に置いておかなければならない要素だと考えられる。
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