ドイツにおける末梢静脈カテーテルの管理およびガイドラインの実施:全国調査★

2020.06.30

Management of peripheral venous catheters and implementation of guidelines in Germany: a national survey
S.J.S. Aghdassi*, C. Geffers, M. Behnke, A. Gropmann, P. Gastmeier, T.S. Kramer
*Charité-Universitätsmedizin Berlin, Germany
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 311-318


背景
末梢静脈カテーテルは、使用頻度が高いため、カテーテル関連感染症とその予防に関して重要である。2017 年にドイツで、末梢静脈カテーテル関連感染症予防のための国内ガイドライン改訂版が発行された。
目的
末梢静脈カテーテル取り扱いの実践について記述すること、またドイツの急性期病院において、末梢静脈カテーテル関連感染症予防を目的とした国内ガイドラインの発行 10 か月後における実施状況について評価すること。
方法
院内病棟における末梢静脈カテーテルの管理に関するオンライン調査を実施した。このために、ドイツの医療関連感染症国内サーベイランスシステムに参加している急性期病院 1,191 施設に参加を呼びかけた。各病院に対し、集中治療室、ならびに内科病棟および外科病棟に関する調査に回答するよう求めた。本調査への参加は任意とした。
結果
合計で、病院 701 施設(回答率 59%)が参加し、病棟 1,449 カ所(集中治療室 599 カ所、内科病棟 446 カ所、外科病棟 404 カ所)に関するデータを提供した。病棟の約 43%が、必要に応じて新しい国内ガイドラインを導入していると報告した。末梢静脈カテーテル関連感染症を対象とした組織化されたサーベイランスは、病棟の 21%のみで確立されていた。病棟の 94%は、全般的感染予防教育の一環として末梢静脈カテーテルの取り扱いに関する内容を含めていると報告したが、トレーニング法に関する質問には様々な回答がみられた。病棟の約 59%は、末梢静脈カテーテル挿入前の皮膚消毒としてアルコールと残存性のある消毒薬の組み合わせをルーチンでは用いていないと報告した。
結論
全体的に、ドイツにおける末梢静脈カテーテル管理はよく組織化されている。しかし、改善の余地が、特にサーベイランスの検討、ならびに選択された国内ガイドラインの実施として特定された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
血流感染症は、急性期病院での医療関連感染の主要原因のひとつであり、なかでもカテーテル関連血流感染症は予防可能な血流感染症でもある。中心静脈カテーテルは、主に集中治療を要する重症患者に挿入されるため、カテーテル関連感染症を発症すると重篤化するため、挿入から維持管理までの感染予防策が重視され、サーベイランスの実施率も高い。一方で、末梢静脈カテーテルは、一般病棟でも日常的に容易に挿入でき、挿入期間も短いため、感染予防策については決して十分に実施されているとは言えない。本論文は、ドイツにおいて 2017 年 1 月発表の末梢静脈カテーテル感染予防ガイドラインの実施状況を調査したものだが、2017 年12 月の時点で半分以上の施設で自施設に適合させたマニュアルが作成されていないことが判明した。カテーテル管理に関する教育訓練を含め、本ガイドラインの現場への普及が今後の課題である。

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