再発性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症に対する糞便細菌叢移植:経口凍結乾燥カプセルの経験★★

2020.06.30

Faecal microbiota transplantation for recurrent Clostridioides difficile infection: experience with lyophilized oral capsules
E. Reigadas*, E. Bouza, M. Olmedo, S. Vázquez-Cuesta, L. Villar-Gómara, L. Alcalá, M. Marín, S. Rodríguez-Fernández, M. Valerio, P. Muñoz
*Hospital General Universitario Gregorio Marañón, Spain
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 319-324


背景
糞便細菌叢移植(FMT)は、難治性および再発性クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)に対する効果の高い治療法である。FMT はその優れた効果にもかかわらず、ほとんどの医療センターにおいてルーチンの手技となっていない。凍結乾燥カプセルに基づく FMT の経験はほとんどなく、欧州の諸施設によるデータは得られていない。本稿では、再発性 CDI 治療を目的とした、経口凍結乾燥カプセルを用いた FMT の著者らの経験を記述する。
方法
単一施設において、2018 年 1 月から 2019 年 5 月にかけて FMT を受けた、再発性 CDI 患者の前向きに記録した症例シリーズについて分析を行った。主要転帰は、2 か月間にわたり再発のない CDI を治癒と定義した。総合的治癒は、FMT 再施行後 2 か月以内に CDI 再発のない下痢の解消と定義した。FMT の手技は、1 回の投与時に 4 ~ 5 錠の凍結乾燥カプセルの摂取とした。糞便ドナーの全例について、厳格なスクリーニングを行った。
結果
FMT を患者 32 例に施行した。一次治癒が患者の 81.3%で達成され、総合的治癒率は 87.5%であった。凍結乾燥カプセルを用いた FMT は忍容性が良好であった。凍結乾燥カプセルを用いた FMT により、FMT 手技に関連する有害事象も、その後の合併症も報告されなかった。
結論
この初の臨床経験から、経口凍結乾燥製剤に基づく FMT は、再発性 CDI に対して、安全で忍容性が良好であり、効果が高かった。経口凍結乾燥カプセルの投与は、ルーチンの病院診療として実施可能であり、FMT のより広範な使用を可能にするであろう。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CDI の治療はこれまでバンコマイシンやメトロニダゾールなどの抗菌薬が標準的治療とされている。その後モノクロナール抗体(ベズロトクスマブ)や、新規の CDI の選択的抗菌薬であるフィダキソマイシンが再発症例への治療的ブレイクスルーとして登場してきたが、費用対効果については前者は劣ることがわかっている。便移植の登場は、初回効果が高く、再発率も低く、費用も安価である点で、画期的な治療法である。しかしながら、便を使用するという点で、ドナーの選択、便の処理、保管と投与経路の問題に加え、患者の心情的な抵抗があるのも事実である。凍結乾燥したドナーの糞便をカプセル化することで、保存から投与までが容易となり、ドナーバンクの有効活用も可能となり、今後の展開が期待される。

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