米国で導入化学療法を受けている血液内科患者における入院中のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症による過剰な負担★

2020.04.28

Excess burden associated with Clostridioides difficile infection in haematological patients occurring during hospitalization with induction chemotherapy in the USA


L. Duhalde*, L. Lurienne, S.M. Wingen-Heimann, L. Guillou, R. Buffet, P.-A. Bandinelli
*Da Volterra, France
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 560-566
背景
血液疾患患者は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)を発症するリスクが高い。
目的
本研究は、米国において導入化学療法のための入院中に発症した CDI に関連する入院期間の延長および医療費の増大について記述することを目的としていた。
方法
米国のデータベース Truven Health Analytics® のデータを利用して後向き解析を実施した。急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫のために導入化学療法を受けている患者の包括的入院データを解析した。入院中に発症した CDI 患者と対照者について、直接医療費および入院期間の症例対照比較を、厳密なマッチングアルゴリズムを用いて実施した。
結果
2014 年 1 月から 2017 年 12 月に患者計 2,611 例が組み入れられた。基礎疾患で多かったのは非ホジキンリンパ腫(43.5%)および急性骨髄性白血病(38.4%)で、患者の15%は幹細胞移植を受けていた。マッチングにより、CDI 症例 105 例を対照者 801 例と比較した。CDI 症例では対照患者と比較して入院費が平均で 36,113 米ドル高く(P=0.009)、CDI 症例では入院期間が平均で 8.9 日長かった(P=0.003)。
結論
今回の所見は、米国では導入化学療法を受けている血液内科患者において CDI に関連する負担が非常に大きいことを示している。この患者集団では特に、CDI 予防の必要性が高い。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CDI 発症による医療費と入院期間の増大は当然であるが、本論文は血液悪性腫瘍患者における CDI に特化し、それらの医療費と入院期間を研究している点でオリジナリティをもつ。過去の報告では白血病患者の 3.5% 〜 7%で CDI 発症が報告されている。CDI 発症により、入院費用が約 36,000 ドル(約 385 万円)も余分にかかるという事実に驚愕する。CDIの原因菌である C. difficile は長期にわたり、環境に生存するため、徹底した環境整備と接触感染対策が必須であることはいまさら言うまでもない。CDI 感染症発症による予後の悪化が予測される。

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