病院 1 施設における Mycobacterium paragordonae の偽性アウトブレイク:給水システムの蛇口に設置されたエアレータ/整流器が関与する可能性★

2020.04.28

Pseudo-outbreak of Mycobacterium paragordonae in a hospital: possible role of the aerator/rectifier connected to the faucet of the water supply system
I. Takajo*, C. Iwao, M. Aratake, Y. Nakayama, A. Yamada, N. Takeda, Y. Saeki, K. Umeki, T. Toyama, Y. Hirabara, M. Fukuda, A. Okayama
*Miyazaki University Hospital, Japan
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 545-551

 

 

背景
病院において、給水システムが関与する非結核性抗酸菌(NTM)による偽性アウトブレイクが以前に報告されている。著者らは 2014 年に日本の病院 1 施設において、改築および改修後の臨床サンプルで NTM が分離される頻度が高いことを報告した。

 

目的
NTM について、それらが病院の給水システムと関連する可能性について、また予防措置の結果について分析すること。

 

方法
NTM について検査を行うため、院内の複数病棟において給水システムから環境サンプルを採取した。NTM 陽性の結果が得られた場合は、ポリメラーゼ連鎖反応検査(PCR)を用いてさらなる分析を行った。

 

結果
NTM の PCR 産物から、検査を行ったほとんどのサンプルで Mycobacterium paragordonae陽性の結果が示された。分析対象とした患者のうちでこれらの細菌による何らかの疾患を発症した者はいなかったため、このイベントは偽性アウトブレイクと考えられた。給水システムを調べたところ、病院の改修時に最近設置されたエアレータ/整流器から採取されたサンプルは、これらの細菌について検査陽性であることが明らかになった。そこで、病院内でエアレータ/整流器を取り外し、患者が水道水を飲まないようにする措置を講じた。その後、病院内で NTM に陽性のサンプルの頻度が減少した。

 

結論
本研究は、病院における M. paragordonae による偽性アウトブレイクの可能性を明らかにした数少ない研究の 1 つであり、これにより、そもそも病院内でエアレータ/整流器を使用すべきかどうかという疑問が提起された。なぜなら、これらの器材のメッシュ構造は給水における NTM の増殖を促進する可能性があるためである。環境に由来する細菌のサーベイランスが、特に病院の改築/改修後には、再強調される。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント
非結核性抗酸菌(NTM)による偽性アウトブレイクは病院内の水道水の汚染で報告されており、本論文では「水道の蛇口のエアレータ」に定着したことが原因であった。水道の蛇口のエアレータ・整流器の目的は、水の流れの真直度と直径を制御し、シャワー状に拡散させて、水量の節約と水跳ねを防げることとされている。水道蛇口からの NTM は、時に免疫低下患者(血液悪性腫瘍、臓器移植、透析、AIDS)の感染症の原因となるため、病院において水道水の管理は見逃されがちであるが院内感染対策上注意が必要である。

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