フランスのナーシングホーム入居者における基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ(ESBL)産生エンテロバクター目の保菌率・遺伝的多様性、および保菌と関連する因子
Prevalence, genetic diversity of and factors associated with ESBL-producing Enterobacterales carriage in residents of French nursing homes
M. Broussier, H. Gbaguidi-Haoré, F. Rachidi-Berjamy, X. Bertrand, C. Slekovec
*Centre Hospitalier Régional Universitaire, France
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 469-475
目的
フランスの地方のナーシングホームにおいて、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生エンテロバクター目およびカルバペネマーゼ産生エンテロバクター目の保菌率と遺伝子型特性を明らかにすることを目的とした。保菌と関連する危険因子についても検討した。
方法
研究地域のナーシングホームに、2017 年 11 月から 2018 年 6 月までの点有病率調査を提案した。ボランティアの入居者において、ESBL 産生エンテロバクター目およびカルバペネマーゼ産生エンテロバクター目の保菌のスクリーニングを実施した。大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の分離株について、multi-locus sequence typing 法、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)、系統発生分類(大腸菌のみ)により遺伝子型を決定した。全体的なデータおよび個々のデータをランダム効果ロジスティック回帰により分析した。
結果
本研究は、ナーシングホーム 18 施設で実施し、患者 262 例を対象とした。52 例(19.8%)が少なくとも 1 種の ESBL 産生エンテロバクター目を保菌し、分離株 56 株が検出された(大腸菌 42 株、肺炎桿菌 11 株、その他 3 株)が、カルバペネマーゼ産生エンテロバクター目は検出されなかった。ESBL 産生大腸菌の大半(42 株中 27 株)は系統発生分類 B2 に属し、このサブタイプにおいて ST131 が過剰に検出された(27 株中 21 株)。PFGE 解析により、ナーシングホーム内で ST131 の交差伝播が明らかになった。ESBL 産生肺炎桿菌に関して、11 株中 9 株が ST663 に属し、PFGE により、ナーシングホームの 6 施設におけるクローンの拡散が示唆された。ESBL 産生エンテロバクター目保菌に対する個人レベルでの有意な危険因子は、共用バスルームの使用、抗菌薬使用歴、最近の入院歴であった。集団レベルでの有意な予防因子は、厳密な手袋使用遵守、医療施設によるナーシングホーム支援であった。
結論
本研究より、研究地域のナーシングホームは ESBL 産生エンテロバクター目の重要なリザーバであるが、カルバペネマーゼ産生エンテロバクター目保菌の入居者はいないことが示された。ナーシングホームの ESBL 産生エンテロバクター目の制御において、抗菌薬適正使用および排泄物の管理政策に重点的に取り組むべきである。
監訳者コメント:
ナーシングホームにおけるESBL 産生エンテロバクター目保菌に対する個人レベルでの有意な危険因子は、抗菌薬使用歴、最近の入院歴に加え、共用バスルームの使用という結果であったことは、印象的であった。その一方で、手袋の単回使用ができていることが予防因子として有意であったことは納得の結果であった。
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