環境汚染は患者に関連する特定の特徴によって説明可能か? Can environmental contamination be explained by particular traits associated with patients?
B. Pilmis*, T. Billard-Pomares, M. Martin, C. Clarempuy, C. Lemezo, C. Saint-Marc, N. Bourlon, D. Seytre, E. Carbonnelle, J-R. Zahar
*Groupe Hospitalier Paris Saint Joseph, France
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 293-297
背景
環境汚染に関連する患者のリスク因子についてはほとんど知られていない。
目的
環境汚染率を評価すること、ならびに個々のリスク因子を検討すること。
方法
前向きコホート研究を実施した。毎日、患者が入室している 5 病室が選択された。5 つの重要表面を 1 日 2 回、清掃の前と後に計画的に拭き取った。全患者の臨床的特徴を収集した。環境汚染と患者の特徴との関連性を評価するため、ロジスティック回帰分析を実施した。
結果
連続患者計 107 例が含まれ、1,052 件の環境サンプル採取を行った。19 例(18%)の患者は多剤耐性病原体(MDRO)を保菌している、または MDRO に感染していることがあらかじめ分かっていた。サンプル 723 件(69%)で≧1 cfu/cm2 の、112 件(11%)で>2.5 cfu/cm2 の細菌の増殖がみられ、結果として 62 病室(58%)が汚染されていた。1 つ以上の病原性細菌に対して陽性のサンプルを考慮すると、16 病室(15%)が汚染されていた。単変量解析と多変量解析によると、解析された変数で環境汚染と関連しているものはなかった。>2.5 cfu/cm2 の汚染された病室を考慮すると、3 つの因子が環境汚染に対して防御的であった。3 つの因子は、既知の MDRO 保菌者または感染者(オッズ比[OR]0.25、95%信頼区間[CI]0.09 ~ 0.72、P = 0.01)、尿路カテーテルを有する患者(OR 0.19、95%CI 0.04 〜 0.89、P = 0.03)、個室への入院(OR 0.3、95%CI 0.15 〜 0.6、P < 0.001)であった。
結論
本研究は非アウトブレイク状況において実施され、病原性細菌による環境汚染率が低いことが示された。環境サンプルのうち>2.5 cfu/cm2 の細菌の増殖がみられたのは 11%のみであり、それらは非病原性細菌に関連していた。環境汚染に関連するリスク因子は特定されなかった。
監訳者コメント:
フランスの500床の病院での研究報告である。「重要表面」は、ベッド柵、アームチェアー、トイレ便座、オーバーテーブル、ドアハンドルであり、1日2回表面の汚染を確認した。どの場所も6割から8割何かしらの菌が検出されていたが、黄色ブドウ球菌に限れば、1.4%(オーバーテーブル、ドアノブ)から3.7%(ベッド柵)であり、アウトブレイクが発生していない状況では、高汚染部位ではなかった。
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