プロピジウムモノアジド-リアルタイム PCR によるヒータークーラーユニットを用いた非結核性抗酸菌検出の所要時間の短縮★ Reduction of turnaround time for non-tuberculous mycobacteria detection in heater‒cooler units by propidium monoazide‒real-time polymerase chain reaction

2020.03.31

S. Ditommaso*, M. Giacomuzzi, G. Memoli, R. Cavallo, A. Curtoni, M. Avolio, C. Silvestre, C.M. Zotti
*University of Turin, Italy
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 365-373


背景
侵襲性非結核性抗酸菌(NTM)感染症は、開胸心臓バイパス術を受けて、汚染されたヒータークーラーユニットに曝露された患者に、世界的にみられる新興感染症である。このアウトブレイクの研究は、ヒータークーラーユニットのエアロゾルサンプルや水サンプルから分離された細菌の培養によって行われてきたが、こうした従来型の方法では検査感度が低く、サンプルの汚染率が高く、所要時間が長い。
目的
リアルタイム PCR によりヒータークーラーユニットで NTM を検出するための、簡便かつ効果的で、検査所要時間が短く、信頼性の高い培養結果が得られる方法を開発すること。
方法
イタリアの病院 7 施設のさまざまなヒータークーラーユニットから得た水サンプル計 281 個を対象に、NTM についてプロピジウムモノアジド‒ PCR アッセイおよび従来の培養検査により同時にスクリーニングを実施した。得られた結果の解析は、培養検査を基準として行った。
結果
(i)培養検査とプロピジウムモノアジド‒ PCR における結果の一致度は、サイクル閾値(CT)のカットオフ値を 38 未満とした場合は85.0%であったのに対し、CT 値を 43 未満とした場合は80.0%であり、Cohenのκ相関係数は中等度であった。(ii)CT のカットオフ値を 42 未満とすることが、陽性サンプルの予測においてより適切と見なされた。(iii)対象とする DNA 濃度が水サンプル中で低いことから、検査に必要な水の最低量は 1 L である。
結論
環境サンプルにおける NTM の迅速検出を目的としたプロピジウムモノアジド‒ PCR の使用は、ヒータークーラーユニットが NTM 感染の曝露源であるかどうかを確認するために強く推奨される。信頼性が高く簡便なこの方法は、検査所要時間が従来法より短く(1 ~ 2 日対 8 週間)、これにより感染制御戦略の改善およびヒータークーラーユニットの効果的な管理が可能になる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
プロピジウムモノアジドは、二本鎖 DNA を修飾する細胞膜不透過性の色素で、生菌の選択的な定量を可能にするとされる。今回の PCR 法は、ヒータークーラー・環境中という菌量が少なく、かつ生菌を検出したい条件において、特に有用性が期待される。ただし菌数が少なく、汚染が生じやすいことは、PCR の結果の解釈を難しくさせる短所ともいえ(サイクル数である CT 値が多い増幅は、汚染の可能性も高くなりやすい)、これが CT 値のカットオフ値の設定に関わってくる。実用において標準化と工夫が求められるが、本報告の価値は高いと考える。

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