日本の新生児集中治療室における選択された感染制御戦略の実施状況に関する調査★

2020.02.29

A survey of the implementation status of selected infection control strategies in neonatal intensive care units in Japan


S. Suga*, T. Hoshina, S. Ichikawa, S. Araki, K. Kusuhara
*University of Occupational and Environmental Health, Japan
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 200-206
背景
感染制御戦略はすべての新生児集中治療室(NICU)で実施されているが、戦略の詳細は施設によって異なるようである。本調査の目的は、日本の NICU における感染制御戦略の現在の実施状況を調査すること、および新生児病棟におけるアウトブレイク予防のための適切な戦略を明らかにし、推奨することであった。
方法
本調査では、選択された感染予防・制御策(積極的サーベイランス培養およびスタンダードプリコーション[標準予防策])について、日本周産期・新生児医学会に登録された日本の NICU/新生児病棟 453 施設を対象に、2018 年 5 月に質問票を用いて調査を行い、現在の実施状況および方法を記録した。
結果
回答率は 48.1%(レベル Iの施設:25.5%、レベル II の施設:55.9%、レベル III の施設:64.2%)であった。サーベイランス培養は週 1 回実施されており、ほとんどの病棟ですべての細菌を対象に行われていた。過去 5 年間にアウトブレイクを経験したレベル III の施設の割合は、レベル II の施設よりも有意に高かった(55% 対 27%、P = 0.0003)。しかし、マスク着用が推奨されている頻度は、レベル III の施設(55.7%)の方がレベル II の施設(67.9%)よりも低かった。NICU におけるアウトブレイクの原因病原体として最も高頻度に報告されたのは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)であった。
結論
日本の新生児病棟における感染予防・制御策の実践は、病原体に対する積極的サーベイランス培養の実施およびスタンダードプリコーション(標準予防策)の使用に関して、幅広いばらつきが認められた。国内ガイドラインおよびエビデンスに基づく推奨が、日本の新生児病棟における現行の感染予防・制御策の実践を合理化し、標準化するために必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
NICU は過去においてエビデンスよりは慣習に囚われた感染対策が実施されていた。不必要な靴の履き替え、ガウン、手袋、マスクなどであったが、時代と共にその慣習は、医学的根拠に基づいた対策に変わってきた、本論文では NICU の感染対策が均一化されていない現状を報告している。日本の NICU における根本的な問題は、これらのソフト的な感染対策よりも、ハード面に問題がある。すなわち、1 人あたりのベッド周囲の面積の狭隘さである。狭さの故に多くの NICU のベッド回りには、さまざまな物品が整理整頓できずに置かれている光景を目の当たりにするにつけ、広い面積と十分なベッド間隔の必要性を痛感する。

レーティング:★

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